のんのんばあとオレ (講談社漫画文庫)

著者 :
  • 講談社コミッククリエイト (1997年7月10日発売)
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感想 : 56
3

漫画だからさらっと読める。
時代や地方性など、今、私たちが生きる現実とは
多々違うこともあるけど、大事なことは変わらないんだなあと思える。

のんのんばあの言うことには、重みがある。
お父さんもダメ親父のように見せかけて、
ちゃんと大事なことを言っていた。
「その悲しみは宝物だ。ええ思い出をもらったな。勉強なんか落第しない程度にしたらええ。
それよりいまは、いまでしか作れん財産をいっぱいに作ることだ。それがいつか役に立つときがくるけんなあ。」
「男にとって女は教師だよ。学校なんかじゃ教われないいろんなことを教えてくれる。
学校なんかやめてもええが、女に恋することをやめたらあかん。」


千草を亡くし、悲しみに暮れるしげーさんに
話すのんのんばあの話は、私にも優しく響いた。

亡くなった人の魂が自分の心に宿るから、
心が重くなる。
でもしばらくすると、その重さにも慣れるから、
心配はいらない。
身体は物を食べて大きくなるけど、人の心は
いろんな魂が宿るから成長する。
もっともっと重い魂が宿っても、その重たさを
もちこたえるぐらいに、人の心も大きくなって
大人になるのだと…

ものすごくじんときた。
こんなことを言ってくれる大人がそばにいたこと、
作者の水木さんは幸せだったんだなあと思う。

この世は、人間だけが幅を利かせて
生きて良いわけではなく、ちゃんとあちらの世界の
人?物?にも敬意を表さなくてはいけないこと、
しみじみと感じる。

ところどころに出てくる妖怪も、怖いけど
どこか可愛いところもあって、日本の風土や
風習に由来してるんだろうなあと思わせるところが
ある。小豆ばかり…が特に好き。

ラストのお話、美和ちゃんのお話は
切なかったなあ。
1人浜辺でゆらゆらと揺れる光、
美和のお母さんと話す姿、きっと本当に
お母さんの魂だったんだろうなあ。
自分で決めて、神戸に芸者として売られて
行くことを受け入れていた。

不幸の中にある幸せの芽…
生きる目標が定まったということはある意味、
幸せかもしれない。

大事な場面で出てくる、お父さん、
良いこと言うなあ。ら
あの時代、本当に子供が売られるみたいこと、
あったんだろうなあ。

のんのんばあが言うには…
こちらが優しい気持ちで向き合うたら、
霊も優しくなるもんでなあ。
あるんだろうな、私には見えない世界も。
面白かった。水木さん、すごい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月26日
読了日 : 2023年9月26日
本棚登録日 : 2023年9月21日

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