運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書 710)

著者 :
  • NHK出版 (2023年11月10日発売)
3.59
  • (11)
  • (24)
  • (27)
  • (1)
  • (3)
本棚登録 : 506
感想 : 26
3

面白かったけど、題名はこれが的確なのか?
行動遺伝学という学問から見た、真実に
ある程度の衝撃を受ける。
知らなかった‥というのが本音、
もうちょっと違うタイトルでも良かったような気がする。

ヒトゲノムを解析する驚異的なテクノロジー、GWAS=ゲノムワイド関連解析、ジーワスの裏付けの事実を知る。

人生の全てに遺伝が関わっているのだから、
もちろん運も例外ではない。
と、対談相手の安藤先生も言っている。

・偶然の出来事の26%は遺伝で説明ができ、
本人に依存する出来事との遺伝率30%と統計的に
優位な差はない
・親から子へ受け継がれる遺伝子の顕性遺伝と潜性遺伝がある。ハンチントン病は顕性遺伝で、変異型の遺伝子が一つでも発症してしまうけれど、大人に塗らないと発症せず、その前に子供を産んでしまうことで遺伝子が生き延びている例である
・親の経済格差が子どもの教育格差を生むとの予測と同レベルで、遺伝子を調べたポリジェニックスコアにより、子どもが大学を卒業するかどうかの予測と一致する、受精卵をゲノム解析した時点で、これから生まれてくる子どもが大学を卒業できる可能性が高いのか、低いのかわかってしまう
・欧米では保守とリベラルの逆転現象が起きている。欧米のリベラルは遺伝ガチャを容認し、運の平等主義=遺伝決定論を主張しており、保守派は遺伝よりも本人の努力を重視している
・日本では素朴遺伝観の域を出ず、人の能力を決めるのは遺伝ではなく環境だ、大事なのは教育だとされる批判がある
・遺伝は内在+不可変、環境は外在+不可変となり、遺伝と環境は対立し、一方が正しければもう一方は間違っているという議論になりやすい
・外在でも不可変なもの、自分では変えられない環境要因、家庭環境や生まれ落ちた地域社会、時代背景など、変えられない環境はさまざまある
・内在でも変えられるもの、努力であり自由意志でコントロールは可能だが、環境もまた遺伝の影響を受けており、遺伝が影響する領域は環境にも及ぶ
・遺伝率を見ると計算や認知、学歴のような知能だけでなく、やる気や集中力のような性格とされるものも、ほぼ半分は遺伝で説明できる
・人間関係や家族関係、子育て、宗教、スピリチュアリティの要素にも3割程度の遺伝率が見られる
・遺伝率の混乱、ある人のIQが100の時スコアのうち50が遺伝で決まり、残りは環境や学習で決まるということではない!その人の属する集団のばらつき全体のなかで、遺伝によって説明できるばらつきの相対的な大きさが50%という意味である
・人生は遺伝だけで決まるわけでも、環境がすべてでもなく、コンディションも加えたランダムな組み合わせである
・統計学による平均への回帰により、通常どの能力についてもサンプルを多く集めグラフ化すれば、正規分布し、ベルカーブを描く
・子どもをあたりにしなければという強迫観念
・知能にせよさその他の能力にせよ、持って生まれた能力を社会で最大限に発揮できることが、自分らしく生きることであり、それを阻むのが環境なのだから、リベラルの理想「遺伝決定論の批判」が実現すれば、生まれや育ちのような環境の違いはすべてなくなり、遺伝率は100%となる
・問題は遺伝的な特質のなかである表現型を高く評価し、別の表現型を嫌ったり排除したりする社会の構造である
・言語能力が低かったり、心の理論がうまく構築できない子どもは、未知の世界を怖いところだと感じるようになる、友人や知り合いだけの狭い世界で生きて行く方が快適になるだろう、これが保守のパーソナリティとなる
・対して、言語的知能が高いと、問い詰められても説明できるし、未知の世界を恐れる理由がない。違う国の文化や宗教に興味を持ち、留学したり海外で働くことを面白そうだと思い、恋人を作る時も、異なる文化圏の相手の方が刺激的だと感じる-リベラルの典型的なパーソナリティである
・過去の経験から予測できる範囲で生きていくというストラテジーを取るのが保守、予測できないから出来事を面白いと感じて経験の幅を広げていくのがリベラルのストラテジー
・知能は60%、非認知能力でも30〜40%の遺伝率はあるが、これはあくまで一般的な知能や非認知能力で、測られない残りの、本来の能力があり、
それを発揮し、生きていくこと、生きることのリアリティを大事にしていくことが大事

などなど、私の気になったところ〜

結論:遺伝的なアドバンテージをフックにして、好きなこと、得意なことに人的資本を集中させる。そのうえで自分の強みを活かせるニッチにら活動の場をずらすことで、それなりに成功を手に入れることができるのではないか…とのこと。

やはり、自分のなかで気になること、興味を持つことというのは、ある程度遺伝の要素もあるのかもしれないなあ。子どもを育てた経験からも納得できる部分もあり、画一的な子育てや教育には、意味がないんだなあと実感する。親がこうだからとか、そんな決めつけも必要ないことも知り、それなら私はどう生きるのか、私の好きなこと、得意なことは何なのか〜と改めて自分を見直すきっかけにもなった。良かった!行動遺伝学、面白いかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月24日
読了日 : 2024年3月23日
本棚登録日 : 2024年3月12日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする