2013年刊。著者は国際日本文化研究センター教授。
「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたる事もなしと思へば」に象徴される、栄華を極めた藤原道長。
世界最古の道長の自筆日記「御堂関白記」と、同時代の藤原実資著の「小右記」や藤原行成著の「権記」を基に、平安中期の都の政治、道長や藤原一族の私生活模様を開陳する書である。
その範囲は外戚関係形成過程、贈答・下賜、当該目的の物品の入手(受領層から、唐物)、建築物(私邸や宇治平等院など)、或いは京都という都市論や洪水・地震・蝗害の天災、放火ほかの人災まで及ぶ。
ただやはり、ここでも政治の根幹、すなわち一般から徴収する税(税的なもの)とその配分、その基準については明快にならない。政治・財政の公私混同というだけではなく、徴税システムとその配分に関する史料が少ないんじゃないかなという印象が強く残る。
とはいうものの、①平安時代中期、②政治史及び社会史、③京都近辺、④藤原道長とその一派、⑤摂関政治という観点で見るならば、読みごたえは十分あり、「平安中期の京都」という面での関心が生まれれば、本書の再読の価値は高いことは確か。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2016年12月10日
- 読了日 : 2016年12月10日
- 本棚登録日 : 2016年12月10日
みんなの感想をみる