ようやく最新刊まで読破。
全国高校かるた選手権準決勝、そして3位決定戦。
ここまでの巻では、描写には全く不満がなかったが、初めて残念だと言わざるを得ない31巻。
それは、新と千早の公式戦の描写である。
勿論、千早が勝つこと、その理由が団体戦における千早の一日の長が影響したこと。そして、恋などの個人的感情を超越し、皆のためという感情を千早が持ちえたことを軸に据えたことは全く問題がない。
問題なのは、その過程描写である。
まず、創部1年目の段階で全国大会準決勝に進出してきた藤岡東。新の手腕を軸にしたチームワークに素直な感嘆があっても良かろう。
そもそも、互いの対戦に関して、あれほど丁寧に描いてきた本作。
リアリズムを捨てて対戦描写に尺を割くのは、スポ根作品の王道でもある。それは、その描写が、対局する双方それぞれの感情描写に繋がっているのだからだ。
が、えっと驚くほど淡泊である。
しかも、今回の対決は、(多分)新と千早の公式戦初対決である。千早はこれを待ち望んでいたのではないのか。このために、彼女はかるたを続けてきたのではないのか。
一旦はかるたを捨てた新を、もう一度この世界に引きずり込んだのではないのか。
こういう様々な感情の描写を踏まえて、冷静な試合運びをし、勝つことができた。というなら何も言うことはないのだが…。
果たして本巻の描写がそうできていたのであろうか。大いに疑問である。
例えば、原田先生。確かに彼は重要キャラだが、所詮脇役である。ところが、その原田先生の名人位争奪対局の濃密さに比した、今回の対戦の淡泊さ。
次巻の挽回のない限り、とても納得できないところである。
- 感想投稿日 : 2016年12月31日
- 読了日 : 2016年12月31日
- 本棚登録日 : 2016年12月31日
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