昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐 (中公新書 2144)

著者 :
  • 中央公論新社 (2011年12月17日発売)
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感想 : 32

2011年刊。戦前昭和時に日本の政治をリードした陸軍の政治的意思につき、永田鉄山→石原莞爾→武藤章→田中新一の主張を軸として解読する。おそらく書簡等から引用したのだろうが、出典が明確ではない点が気にかかる。が、内容は多面的かつ詳細で非常に興味深く、一読の価値は極めて高いと思う。本書から受ける印象だが、時に正しい認識を持つ人物がいた(例 ①中国の実力・ナショナリズムを踏まえ、日中戦争の推移を正しく予見した石原、②独ソ戦の推移を正しく認識した武藤、③日米交渉での米国の意図を正しく把握した田中)のは間違いない。
しかし、全体としては、①ドイツの国力分析の不備(特に田中の罪は重い)、②中国におけるゲリラ戦分析の不備(この点は武藤の罪は重い)は否めない。独ソ戦の一因が、ソ連の供給する軍事物資の停滞と石油不足にあり、ドイツがソ連の援助に戦争遂行を依拠していた点を看過した事実は取り返しのつかないミスと思える。また、日清戦争時の臥薪嘗胆の境地を忘れ、隔たってしまった彼らの心性も納得しがたいものが残る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月16日
読了日 : 2017年1月16日
本棚登録日 : 2017年1月16日

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