マンガを解剖する (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2004年11月9日発売)
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本棚登録 : 65
感想 : 11

2004年刊。著者は東京芸術大学美術学部助教授(東京大学医学部養老孟司研究室助手歴あり)。経歴から窺い知れるとおり、科学と美学(絵画・仏像などの文化財を含む)の両面からマンガを解読。確かに、マンガにおける「絵」というものの意義を明快に叙述した「Ⅰ言語論」「Ⅱ絵画論」はこれまで無意識であった領域に焦点が合い、得心する読後感。特に①少女マンガにおけるコマ割と描線の絵画性・非記号性(手塚漫画の主流とは一線を画している)、②アニメーションではなかなか使いづらい明暗・光闇のコントラストを、マンガでは上手く利用。
しかし、肝心の科学面では期待外れ。身体論の中で「体は子供、頭脳は大人」(感覚器が異なれば、異なる意識を持ちうるという意味で)という名探偵コナンを引き合いに出したのはまあいいとして、大人が子供の世界を覗きうるテクストとして「ドラえもん」が意義深い主旨の指摘には唖然。また、エヴァをマシーンによる身体機能の拡張と見る指摘は、明らかに誤読。こういう側面は先行作品たるマジンガーZに妥当し、エヴァは自我の消失・自他境界の消滅のように思う。その他も電脳(攻殻機動隊)、ネオテニー(AKIRA)と、選択はともかく内容は薄い
長短ない交ぜの一書である。PS.光と闇を描こうとしているアニメーションはないかな、ということで「M3ソノ黒キ鋼」が思いついたところ(その演出が成功していたかどうかは別儀。特に光の使い方)。他にもあるかなぁ?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月23日
読了日 : 2017年1月23日
本棚登録日 : 2017年1月23日

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