ハングルの誕生 音から文字を創る (平凡社新書 523)

著者 :
  • 平凡社 (2010年5月15日発売)
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本棚登録 : 243
感想 : 22

◆シンプルなのに、実は独創的な人工文字ハングル。その文字としての切れ味の鋭さに驚愕すること間違いなし◆

2010年刊行。
著者は元東京外国語大学大学院教授、元ソウル大学校韓国文化研究所特別研究員(朝鮮言語学・日韓対照言語学、音論・語彙論・文法論・言語存在論)。


 先に読破した「漢字伝来」が日本語における漢字の受容・変容の過程と、日本での文字形成過程を明らかにした書なら、本書は、日本と同様に漢字受容圏である朝鮮半島における、
① 朝鮮文字の成立過程(=漢字放逐過程)

② その極北たるハングルの言語学的特徴とを解説したもの
と言える。

 ①の叙述量が少ないのは、李氏朝鮮の三代・世宗がハングルを一気呵成に作り上げた事情による。
 一方、叙述の大半を占める②は、実に刺激的な論考である。詳細は本書を紐解いて欲しいが、① ハングルが漢字や漢文、漢字の借字表記法としての吏読とも口駃(?。日本語訓読に近い)とも違い、文字の創出である点。
② その文字の形態の最小基本単位が音の最小単位音素から来ている点。
③ 音素を文字形態にする基本法則が発音時の口蓋の形態を記号化した。
というあたりだ。
 シンプルかつ独創的なこの方法がハングル作成者(法則を定めた人)のシャープさを物語っているとも言えそう。

 そして本書に掛ける著者の熱意。詳細な文献案内と提示、充実の事項索引。新書とは思えぬ充実ぶりが著者の本気度を語って余りある。
 音素(例えば「照る」と「蹴る」におけるtとk)・形態素など、力が入る故の詳しさが読者の敷居を高くしているきらいはあるが、それでもなお一読の価値は揺るがないだろう。

 漢字を捨て去った朝鮮半島に対して、表意文字の漢字を残した日本語。漢字の読みを覚えるのが容易ではないが、一度覚えたら漢字という表意文字の持つメリット=視読速読が容易との比較をしてみるのも思考実験として面白いかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 研究書
感想投稿日 : 2018年5月27日
読了日 : 2018年5月27日
本棚登録日 : 2018年5月27日

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