大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか

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  • 文藝春秋 (2005年1月15日発売)
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感想 : 15
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あの無力感とあまりにもの分からなさによる困惑がやっと解けた。ただツインタワー倒壊の映像を連日見せ付けられ、意味不明な単語と繋がりが分からない様々なストーリーを必死で理解しようとした中学生の自分に、やっと決別ができた気がする。

9/11の前に起きた、当時のアフガニスタン政権であるタリバンによるバーミヤンの大仏破壊を中心に据えて、ビンラディン率いるアルカイダとタリバン政権の力関係を細かに描写していく。
決して総論ではなく順を追って、力の変化のゆれも、国際社会の認識も添えて丁寧に丁寧に描写していく。

タリバンの本来の起源はただただ治安のよい土地を創出したかったということ。文化を守り国際社会の一員であることを誰よりも願っていたこと。そして国際社会があまりにも要所要所でしか動かないこと。
具体的なデメリット、キャッチーな保護すべきものがないと動かないのは、自分の国家でない以上仕方がないのだが、なにをしたら、どうしたらwarningを共有できるのだろうか。国家元首レベルではなく、政治の優先順位をあげてくれる市民レベルで。
高木さんはその解をPRに求めに行ったから次作があったのだろうか。

あの頃、ニュースは実行犯の顔写真、彼らがどこで訓練を受けたのかをことつぶさに報道していた。ビンラディンとアルカイダとタリバンがセットになって報道され、時によって名称が変わるもの、なにがなんだかさっぱり区別できなかった。
あれから、石油がバックにあると言われて中東の石油利権についても読んだし聖戦を知りたくそれに関係する本も読んできた。色んな歴史的な背景も学んだ。それでも、あのカオスは最後まで理解できてないという恥ずかしさをいつも隠してきたのだ。自分の知識と理解が限られていると知っていたから、議論になると黙るようにしていた。
本当に、ちゃんと整理された本書に会えてよかったと思っています。

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感想投稿日 : 2011年8月9日
本棚登録日 : 2011年8月3日

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