経済学の本かと思いきや、幸福論の本だった!
しかし現代経済の動向を踏まえた上での幸福論はストンと腑に落ちる。
訳者あとがきにある個所が特に。
トクヴィルが観察したように、新しい国民(アメリカ人)の幸福感は、せつな的な事象に左右されるため、移ろいやすい。本書が問題提起するように、そうした幸福感を支えてきた経済成長が途絶えた日本やヨーロッパでは、人々は本物の幸福に向き合わざるをえない。したがって、成熟国家における真の幸福は、「地道に自己鍛錬する過程で期待を抱き続けられる状態」と定義できるかもしれない。戦後の高度経済成長を謳歌した終身雇用制度の日本社会には、こうした側面があったように思う。ところが「幸福ははるかなところにあるかぎり、将来にある限り、すばらしいものにみえるが、幸福をつかんだ時、それは何らいいものではない」(幸福論)のだ。夢見る存在であり続けられるのが、幸福なのだろう。そうだとすれば、いろいろと理屈を並べたところで、長い検討や多様な概念にささげる時間も手段もないわれわれにとって、幸福を実感できるのは、やはり経済成長なのかもしれない。しかしながら、「今以上に時代の支配的な経済的価値に結び付く物理的環境が提供されることで自覚できる「(経済的に)豊かである」ことを求めることが、現実的かつ必要かを考えるべき」(2050老人大国の現実)時代であるのも明らかだ。
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- 感想投稿日 : 2015年12月15日
- 読了日 : 2015年12月15日
- 本棚登録日 : 2015年12月15日
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