自白の心理学 (岩波新書 新赤版 721)

著者 :
  • 岩波書店 (2001年3月19日発売)
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無実であっても、取り調べで得られたうその自白が証拠とされる。なぜ嘘の自白をしてしまうのか?本書は、4件の冤罪事件(内1件は再審中)の分析から、うその自白に至る過程、犯人を演じる過程を考察する。
周りの圧力か…。ニュートラルな状況で取調べがなされるかと思ったが、どうやらそうではないらしい。犯人と決めてかかられる。無実の可能性を鑑みられることなく、進められてしまったら…。それぞれの事件の被疑者の心中を察すると、悲痛なこと極まりない。
本著を読み、ショッキングだった。それだけ、冤罪事件に無関心、無知であったのだな。

・日本の有罪確定率99.9%→冤罪であっても無罪を勝ち取ることが難しいということ
・無実の人がうその自白に落ち、うその犯行ストーリーを語るというのは、心理的にきわめて異常な事態ではなく、犯人として決めつけられた時に誰もが陥りうる、自然な心理過程→被疑者を囲む状況の側の異常
・嘘は嘘である限り、本来は暴かれなければならない。しかしその嘘が本当だと思われた時には、むしろそれを促され、支えられることもある。
・被疑者は無実かもしれないという可能性を少しでも考えていれば、自白の嘘を暴くことはできる。ところが我が国の刑事取調べにおいて推定無罪は名ばかりで、取調官は被疑者を犯人として断固たる態度で調べるというのが常態になっている。
・こいつが犯人に違いないとの断固たる確信のもとに取調べが進行するとき、そこには被疑者を強く有罪方向へと引き寄せる磁場が渦巻いている。その磁場のもとにひたすら長く留めるだけで、まず大抵の人は自白に陥る。心理学的に自然な人間の姿。
・無実の人がうそで自白するとき、常軌を逸した状況の中で、被疑者はごく正常な心理として「犯人になる」ことを選ぶ
・自白して「犯人になる」と、今度はよりよく「犯人を演じる」ことを求められ、またそれに応じる以外にない
・状況の異常性なさらされて、どうにかそこで精神の正常を保つために自白する

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2016年
感想投稿日 : 2016年4月17日
読了日 : 2016年4月17日
本棚登録日 : 2016年4月17日

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