偶然性と運命 (岩波新書 新赤版 724)

著者 :
  • 岩波書店 (2001年4月20日発売)
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感想 : 25
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Twitterのフォロワーさんがお勧めであげられていたので手に取りました。偶然にしかすぎない人との出会いに「運命」を感じるのはどうしてなのか、その瞬間、二人の内面では何が起きているのか。この問いをハイデガーの「現象学の根本問題」の時間論、九鬼周造の偶然性に関する諸々の論考を中心に、ショーペンハウアー、ニーチェ、ドストエフスキーの「悪霊」「カラマーゾフの兄弟」を引用しながら繙く。とても興味深く読みました。「人との偶然の出逢いを「めぐり逢い」として、つまり運命的な出逢いとして意識するということは、この出逢いをきっかけにして、これまでの過去の体験がすべて整理しなおされ、いわば再構造化されて、あたかもすべてがこの出逢いを目指して必然的に進行してきたかのように意味を与えなおされたということ」として、2章では偶然性の概念、3章では西洋哲学で「運命」がどのように哲学されてきたかの流れを包括し、4章ではドストエフスキーの作品を例に取り上げて、偶然の出逢いがどのように運命に転ずるかを記しています。この偶然性と運命の流れの構造は創作をする時にも大いに役立ちそうです。ドストエフスキーの「悪霊」が読みたくなりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2021年5月9日
読了日 : 2021年5月9日
本棚登録日 : 2021年5月9日

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