哲学の使い方 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2014年9月20日発売)
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感想 : 46
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哲学は何か深遠な問題と出会った時に頼りたくなるような、そんな学問だと思っていた。今日まで書かれてきた夥しい哲学書を繙けばそこに正しい答えが書かれているような気がする。しかしそれは否だ。問題解決の手がかりがあるだけだ。哲学するとは部屋に閉じこもって膨大な文献を読み、書かれた言葉を精査し研究するだけにあらず。さまざまな言説や理論が交わされる場所、立ち上がる場所にこそが哲学の居場所だと著者は説く。他者と対等な立場で対話を重ねながら問題の所在を探ること、問いが書き換えられてゆくプロセスそのものをシェアすることが哲学の議論であり、哲学的対話が目指すのは合意ではない。そして今ひとつ大切なことは、わからないもの、正解がないものに、わからないまま、正解がないまま、いかに正確に処するかということだ。解らないでいることの耐性、すぐに結論を出さず、また解りやすい説明や論理、物語にすぐ飛びつこうとしないこと。安易な、短絡的な思考は考えることの放棄だ。社会には不条理が溢れ、そう簡単に答えが出ない難問が山積している。寧ろ答えが容易に出る問題の方が遥かに少ない。そこで求められるのは哲学することだ。多角的に問題を捉えること、他者の言葉にじっくり耳を傾けること。自分とは異なる価値観や異文化、興味のない事柄にも普段から関心を持つこと。私が思うのはSNSがこれだけ発達し、色々な人と、世界と繋がれるようになったけれど、結局繋がっているのは自分の興味関心があるもの、自分と共通点があるものが大半で、自分の関心が低いものは弾かれているのではないか、ということだ。勿論、人との繋がりはネット上のSNSだけではないれけど。哲学するのいうこと、思考し続けるには一箇所に留まっていてはいけないのだなと思った。本書で紹介されている哲学カフェがとても楽しそう。参加してみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2021年1月4日
読了日 : 2021年1月4日
本棚登録日 : 2021年1月4日

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