亡命者 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (2022年5月12日発売)
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本棚登録 : 30
感想 : 2
5

パリで暮らす「私」は極限の信仰を求めてプスチニアと呼ばれる貧しい小さな部屋に辿り着く。そこは日常生活に必要なもの一切を捨て切った荒涼とした部屋だった。プスチニア――ロシア語で「砂漠」を意味するそこで暮らす「私」は沢山の「国境」を越え、「亡命」してきた。「亡命」は「私」を削ぎ落とし、「個」を脱ぎ落とし、透明になる行為だ。「私」の「亡命」の物語は一組の男女の物語へ、そしてある男の手記へと引き継がれていく。深く深く、内なる淵源へと降りてゆき、そこに拓かれた光景は何処までも遠く無限大の静寂に包まれた白と青の世界。神の沈黙と対話し、己の魂の静謐な声を聴く。神秘的な、魂の巡礼の壮大な物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2022年5月16日
読了日 : 2022年5月16日
本棚登録日 : 2022年5月16日

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