戦うハプスブルク家 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (1995年12月15日発売)
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本棚登録 : 274
感想 : 27
5

出版された順番から行くと逆なのだが、この本の前に菊池先生の「傭兵の二千年史」と「神聖ローマ帝国」を読んでおいたほうがいい。あと、読みながらそれらの本を参照するとよりわかりやすい。

人物やものごとの「意味」は、作られるものだから、ほんとうはまず「年号」と「場所」と「人物名」を押さえるべきで、教科書というのは極めてその点で(いろいろ意見はあるだろうが)「公平」に作られている。
でも、つまらないし頭に残らない。

この本は、物語ではないが、「30年戦争」という、結果として近代の条件を整えた出来事を、ハプスブルグ家という「神聖ローマ帝国」の皇帝と、それを取り巻く人々に焦点を当てて読み解いたもので、読みやすく、印象に残りやすい。

とはいえ、やはり名前だけの人や事件、背景がわかっていないとすっきりしない部分もあるから、この本の後で菊池先生が書かれた上述の2冊の本から読むのが良いと思う。

今までベルサイユのばらですら読んだことがなかったが、その150年前に起きた「自由選択の主体が現れるには、特定の生活から引き剥がされるという極めて暴力的な過程を経なければならない。リベラリズムがヨーロッパで出現したのはカトリックとプロテスタントとの30年戦争あとである。(ジジェク「暴力」)」と言われた特別な事件であるこの事件について、包括的に知ることが出来て本当に良かった。

この本だけでは☆4だが、上記の2冊とマリアージュして☆5です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界史
感想投稿日 : 2012年5月4日
読了日 : 2012年5月4日
本棚登録日 : 2012年4月26日

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