生きるということ

  • 紀伊國屋書店 (1977年7月25日発売)
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感想 : 32
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その大半を『持つ』ことと、『ある』事について述べられている。この本は何気なく接している社会概念、常識を覆すに値すると思う。
人は一般的には、欲しいものを入手した喜び以上に、持っていないものを欲しくなる欲望が強く、それはキリがない事である。それを追求する事は、それを持っている人への羨望、嫉妬を生み、本当の幸せは得られない。(私たちが<喜びなき快楽>の世界に生きている。)
所謂、仏教における煩悩を排する事で、それらの欲望に縛られることなく生きられるのだと。初版が1977年となっているが、すでに、現在の資本主義社会の限界、社会状況を見切っている着眼点が凄い。

・消費の物質的な増大は必ずしも福利の増大を意味しないこと、性格学的、精神的な変革が、必要な社会的変革に伴わなければならないこと、天然資源の浪費と、人間生存のための生態学的条件の破壊とをやめなければ、百年以内に破局が起こることが予想される。...、『限りない成長は限りある世界にはそぐわない』
(第七章 宗教、性格、社会)

・私たちの教育は一般的に、人びとが知識を所有として持つように訓練することに努め、その知識は彼らがのちに持つであろう財産あるいは社会的威信の量とだいたい比例する。
(第二章⑥知識を持つことと知ること)

・<愛>とは抽象概念であり、...、実際には、愛するという行為のみが存在する。...、人びとが愛と呼ぶものは、たいていが彼らが愛していないという現実を隠すための言葉の誤用である。
(第二章⑧愛すること)

・子供の成長過程および児童期以後の人間の成長過程に対する他律的な妨害は、精神的病理、とくに破壊性の最も深い根源である。
(第四章 持つこと――力――反抗)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年6月2日
読了日 : 2019年6月2日
本棚登録日 : 2019年6月2日

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