看取る人もなく、ひとりで死ぬ。このような事態がどれほど、どこで、どんな環境のもとで発生し、それがどうしてなのか、どう捉えて対処すべきなのか、について書かれた本。
いろいろなデータが示されていて、それはそれで納得のいくものだけれど、孤独死、もしくは孤立死が増加したのは、何よりまず病院で死ねなくなったからではないのだろうか。もちろんだからと言って病院で死ぬことが必ずしも肯定されるべきではないけれど、「医療」という立場が「死なせたら負け」というような勝負事としての捉え方である限り、この状況は変わらないと思う。
それから、この数十年で一番変わったのは一人の人間の生きる範囲の拡大であるように思う。親の世代は故郷を一歩も出ないことが珍しくなかっただろうけれど、今は故郷どころか国を出てしまう場合だって珍しくもない。高齢者が単身取り残されるというのは当たり前のことなのだ。孤独死は別に異常ではない。ただ、それが「発見されない」ことが異常なだけだ。それについて著者は「死の社会化」が必要だと説いている。おそらく、ごく最近まで「死」はコミュニティで共有する事象だった。高度経済成長期だけが例外的な時期だったのだろうと思う。もう一度コミュニティを再編して、新しい形で弔いを共有することは確かに必要になってきているのだろう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年9月26日
- 読了日 : 2015年9月21日
- 本棚登録日 : 2015年9月26日
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