絞め殺しの樹

著者 :
  • 小学館 (2021年12月1日発売)
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本棚登録 : 892
感想 : 111
4

つらいつらいつらい。
読んでいる間ずっと、このつらさから逃れることができなかった。
昭和初期という時代に子どもであり、女性であった主人公は、時代に翻弄され、不幸の連続だ。
著者に筆力があるぶんだけ、その描写はよりリアルさをもって読者の胸に迫る。
だがしかし、この主人公の受けた苦難は、現代を生きる私たちとは無縁のものになったのだろうかと考えるとき、それを否定できないと気づき、愕然とする。
今だって、虐待される子ども、モラハラ夫に苦しめられる妻など、そこらじゅうに掃いて捨てるほどいるのではないか。
いじめによる自死、親ガチャ、格差社会。
問題点は、今なお私たちのすぐ身近にある。
それに加え、やはりこの小説の舞台が北海道の根室だということも大きいのだろう。
厳しい自然の中、何もない土地を死にものぐるいで開拓してきた先人たちの記憶が生々しくのこる時代であり、土地柄もあって、逃げられない閉塞感がつきまとう。
怒濤のつらさの連続で、最後の最後に見えるか見えないかのわずかな光。
個人的には、もう少し「希望」の要素が多いとよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸
感想投稿日 : 2022年11月13日
読了日 : 2022年11月13日
本棚登録日 : 2021年12月2日

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