むかえびと (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社 (2018年4月4日発売)
3.70
  • (12)
  • (31)
  • (31)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 366
感想 : 21
4

大好きな作家さんのおひとりです。
現役の看護師さんでいらっしゃる藤岡陽子さんの描く"新しい命"に向き合う助産師(むかえびと)の物語は、リアルで厳しい、でも、美しい。
懸命に働く、ひたむきさ、高き志が、眩しくて羨ましくて。そして、わたしの心の底の清らかなるものを刺激します。
藤岡陽子さんの医療小説を読むと、"誰かのために役に立つ自分でありたい"と、想うことしばしば。
その気持ちがきっかけで、小さなボランティアを始めました。

感動的シーンの一つを・・・
七年間におよぶ不妊治療を経て妊娠に至ったが、胎児に異常が見つかった妊婦に、主人公・助産師の美歩の脳性小児まひを持って生まれた姉・美生の話、過去に染色体異常の子を取り上げた時の話をする。
姉への思いも素敵なのですが、過去の出産の話が更に心を打ちます。

『赤ちゃんは出産から三十時間後になくなったが、息を引き取る瞬間まで、家族の時間を三人で過ごしたのだ。』

生まれてすぐに赤ちゃんは亡くなってしまいましたが、産むと決めた時の妊婦さんの台詞が凄い。

『子供を産まなかったら、一生後悔で苦しむかもしれない。それなら悲しむ覚悟をしようと思う。わが子に会って、抱きしめて、ありがとうを伝えるために、悲しみを受け入れようと思うーーー。』

"悲しむ覚悟(悲しみを受け入れる)"・・・言葉が見つかりません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月16日
読了日 : 2021年11月15日
本棚登録日 : 2021年11月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする