ネット大国中国――言論をめぐる攻防 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2011年4月21日発売)
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感想 : 25

移り変わりの早い中国の中で少し前の話になる。グーグルが撤退するに至った経緯やその他、国家としてどのようにネット規制をしていくかについて書かれている。グーグル(谷歌≒谷哥)が撤退する時、グーヂエ(谷姐:www.goojie.com)を即座に作り上げたグーグルファンの話や、河蟹、グリーンダム等々、ネット民のユーモラスなレスポンスについても書かれている。その辺りは洋の東西に関わらず同じような物なのかもしれない。著者はネット上でも現状に批判的な事をよく書いているが、後書きを読むととても熱い想いを持っており、批判的になる心情がとてもよくわかる気がする。以下、必ずしもネット規制に関わった箇所ではないが、興味深かった箇所を抜粋。

P33.日本では議会制民主主義制度というものが定着している。ただ現在の制度は日本の大衆が渇望してやまずに勝ち取ったものではない。第二次世界大戦の敗北によってアメリカからもたらされたようなものだ。それを受け入れる事を選択しただけに等しい。

P77.ウェブサイトに一年間分の点数として100点を与え、減点され30点にまでなった時、そのサイトを封鎖して営業停止にする。当該サイトの編集長、編集主幹ら責任ある立場の者の更迭を指示し、その名簿を作成し、再任を禁ずる。更迭された人のリストを政府が保管し、その後の動向を監視するというシステムが動き始めた、という事だ。

P124.211工程重点大学(21世紀初頭までに100の重点大学を決定し、その100大学に対してのみ国家予算を大幅に投じる)に指定してもらうため、中国全土で大学間の熾烈な競争が始まったが、その選別の基準の中に学生数の規模が入っていたことが災いした。どの大学も吸収合併を繰り返して肥大化し、学生数の大幅増員に心を砕いた。その結果、学生数が爆発的に膨張し、入口しか考えていない施策は出口における市場ニーズを考慮していなかった。

P136.若者たちはトップダウンにより形成された主文化(メインカルチャー)領域では日本を嫌い、激しい反日運動に燃えるが、自ら選んだボトムアップの次文化(サブカルチャー)領域では日本動漫カルチャーが大好きで日本のファッションも電化製品も愛用するというダブルスタンダードを持っている。普段は次文化の精神領域で気軽に生活しているが、

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年7月16日
読了日 : 2017年7月16日
本棚登録日 : 2017年7月16日

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