日本人のためのピケティ入門: 60分でわかる『21世紀の資本』のポイント

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  • 東洋経済新報社 (2014年12月12日発売)
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相変わらずの今更これ読むのシリーズ。
流行っていた時になんとなくウェブ上の記事で内容をかいつまんでいたものの、もう少し詳しく知りたくて購入。購入したまま、実家に置きっ放しになっていたものを引っ張り出して来て、読破。

簡潔に短めにまとまってはいるものの、正直わかりやすいかというとそうでもなかった。それぞれの専門用語が、自分の知識が少ないだけかもしれないが、門外漢には少々イメージが掴みづらかったからだと思う。

まあ内訳は何であれ、一言で言うと格差は拡大し続けているよという事を膨大な資料でまとめたと言う事かと思われる。とはいえ中でも書かれていたが、先進国内で格差は広がってきているが、グローバルに見ると格差は縮まっていると。これはどう見るのだろう?

あとハーバード大学の学生の両親の給与が上位2%であり、”相続”が格差の拡大に一役買っているとの話があったが、見ようによっては、能力がそれらの資産を稼がせ、その能力が子供に受け継がれたという可能性もありそうな気がする。

以下、興味深かった箇所の抜粋。

P.4
日本では別の形で不平等が拡大しています。2000年代に入って名目賃金が下がり続け、非正社員が労働者の4割に近く一方、企業は貯蓄超過になっています。余剰資金は資本家にも労働者にも還元されずに、経営者の手元資金(利益剰余金)になっているのです。

P.12
主張は単純です。資本主義では歴史的に所得分配の格差が拡大する傾向があり、それは今後も続くだろうということです。

P.13
ほとんどの時期で不平等は拡大しており、戦後の平等化した時期は例外だったというのが、ピケティの結論です。

P.14
r > g
ここでrは資本収益率、gは国民所得の成長率です。
ピケティは「資本」という言葉を広い意味で使っているので、rは株式や債券や不動産など、すべての資産の平均収益率です。他方、gは国民所得の増加率ですから、この式は「資本収益率が成長率を上回る」ということを示しています。

P.29
所得分配が平等化するメカニズムと不平等化するメカニズムがあり、不平等が拡大するのを止める自然な傾向はない。そういうしくみとして考えられるのは、人々が豊かになることで技術的知識が普及し、教育投資が増える事で、中郷kなどの新興国にみられる。

文明が発展するにつれて人的資本の価値が高まり、労働者の所得が高まるという説があるが、そういう傾向はみられない。18世紀も今も、物質的資本の重要性は変わらず、資本収益の比重は大きい。

階級間の格差より世代間の格差の方が大きくなったと言うのも幻想だ。格差の大部分は同世代で起こっており、それは遺産相続によって拡大再生産される。この相続効果が現在の不平等の最大の原因だ。

P.39
先進国では所得格差が拡大していますが、世界全体をみると格差は劇的に縮小しています。1970年から2006年にかけて世界の貧困率は80%下がり、所得が1日1ドル以下の絶対的貧困者も60%減って1億5000万人になりました。これは新興国が工業化したためです。
グローバル化で正社員の多い製造業が拠点を海外に移す一方、国内ではサービス業の短期雇用が増えました。このため、製造業の単純労働者の賃金は新興国に引き寄せられて下がる(労働生産性に近く)一方、中高年の正社員との格差が広がっているのです。
しかし先進国では単純ん労働者の賃金が新興国に近くので、知識労働者との国内格差が拡大します。特に日本では、中国との賃金(単位労働コスト)の差が2倍以上あるため、実質賃金の低下が続いています。
このように資本と労働の価格(収益率)が等しくなる現象は要素価格の均等化と呼ばれ、グローバルな格差を縮める力です。それが国内的には、賃金の低下圧力になっているわけです。

P.58
賃金が限界生産性で決まるという理論です。これによると労働者の限界生産性が賃金より大きいと賃金が上がり、最終的には賃金と限界生産性は等しくなります。つまり労働生産性の高い労働者が高い賃金をもらうのです。
この理論では、高い技術を持つエンジニアの供給が少ないと、その需要が増えて賃金が上がります。他方、単純作業のできる労働者の供給は多いので、超供給過多になって賃金が下がります。結果的に、高いスキルを持つ労働者の賃金が上がって格差ができるというのです。
こうした技術をもつ労働者の供給は、教育で決まります(たとえばコンピュータを設計する労働者は大学で教育を受ける必要があります)。他方、その需要はテクノロジーで決まります。たとえば会計事務は、コンピュータがないときは多くの労働者がやっていましたが、今はそういう単純な事務作業の需要は減り、その一方でソフト開発やシステム設計をする労働者の需要は増えています。
このように専門的な労働者の供給はテクノロジーに依存します。こうした教育とテクノロジーのッキョウそうで賃金が決まる、というのが標準的な理論です。
しかし実際には、フランスでもアメリカでも、第二次大戦後、平均賃金は大きくあがりましたが、賃金格差はほとんど変化していません。この期間に大学の進学率は大きく上がり、労働者の教育水準は向上しましたが、所得分配はほとんど変わっていないのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年8月3日
読了日 : 2019年8月3日
本棚登録日 : 2019年8月3日

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