キッド・ピストルズの冒讀: パンク=マザーグースの事件簿 (創元推理文庫 M や 1-2)

著者 :
  • 東京創元社 (1997年2月1日発売)
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本棚登録 : 269
感想 : 31

忘れているかな、と思ったがちゃんと覚えていた。ただ、記憶している以上に逆説が多かったな。『曲がった犯罪』が大傑作というのは間違いないが、他三作もちゃんと面白い。特に『パンキー・レゲエ殺人』はメインよりもサブの部分の作り込みが面白かったり。また『カバは忘れない』はアーキタイプとして綺麗かも。
以下詳細。
『「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件』
天岩戸のような話。出入り出来るからこそ、出入り出来る人間はこのような殺人を犯さない、というロジックが綺麗。実際のロジックとして有用かはさだかではないが、被害者の状態を考慮すればたしかに筋は通る。「ダイエットをする」ことを「常に健康管理をしている人間に言えない」という心理の綾も綺麗。
『カバは忘れない』
ダイイング・メッセージ論はさておき、「本当に殺したかったのはカバの方だった」という真相は綺麗。ただ、引っかかったのはあまりにわかりやすすぎる犯人が少々気になるところ。「通常の犯人なら銀行強盗に見せかける」という気づきもやや強引かも。それより「殺人より重要な何か」という状況は綺麗。
『曲がった犯罪』
先ず芸術家を芸術論で巨匠にさせようという犯人のロジックは綺麗。また「先程まで使えた自動販売機」が「曲がったコイン」によって使えなくなるという物証の出し方、「水が使えなかった」ため「殺害時刻」と「石膏で埋めた」日付が異なるという論理も「殺害現場」を誤認させるために「曲がった猫を殺さざるを得なかった」という全てが収斂していく傑作。最後のキッドの言葉に感動すら覚える。
『パンキー・レゲエ殺人』
利き手がギターの弦の張り方が違うことから流れていくのは利き手問題にしてはスマート。(サウスポーが全部サウスポーかという点に触れなければ)髪を切った理由が神のエネルギーを失わせる為、という理由が見事。また、髪の中に麻薬を入れるというのも綺麗。見立て殺人のパターンとして、順番の入れ替えと豪華なのだが、どうしても不可能犯罪になってしまうと状況が限られてしまうのが難点か。
『なぜ駒鳥を殺したのか?』
ボーナストラック

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2015年6月11日
読了日 : 2015年2月11日
本棚登録日 : 2015年6月11日

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