この世とあの世を繋ぐ六つの短編集。この本全体に死の匂いが深く巣食っている。
特に好みだったのは「よるのふち」。
母親を失って混乱する家庭がリアルすぎるほどリアルで胸が痛んだ。そして蝕まれていくのが子どもだけだったことが、またある意味では切ない。母親を求めているのが子どもで、子どもを求めているのも母親なのだ。
女の白い手が撫でているシーンが印象的。恐ろしいけれど、死してもなお強く消えない想いが、現実との境界線をゆらりと曖昧にしていくようだった。一緒にいたいあまりに、心配するあまりに、生者を引き摺り込んでしまうこともあるのかもしれない。
「かいぶつの名前」もひどく切なかった。浮遊霊と地縛霊目線なんて想像できないのではと思うのに、読んでいるうちにこういう感じなのかもと悲しい気持ちになってくる。成仏するラストがせめてもの救いだ。
胸いっぱいに読み終えた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年2月12日
- 読了日 : 2023年2月12日
- 本棚登録日 : 2022年5月2日
みんなの感想をみる