審判 (徳間文庫 ふ 13-20)

著者 :
  • 徳間書店 (2009年5月1日発売)
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本棚登録 : 170
感想 : 23
4

元警察署長が勲章を授与されたということで開かれたパーティー。そこには、招かれざる客がいた。その人物は、過去に女児誘拐殺人の罪で逮捕されて、懲役刑をくらっていた。この度、刑を終えていたが、ずっと無罪を主張。冤罪を訴えるホームページも立ち上げていた。
その後も、事件を担当した元刑事に近づいたり、被害者の母親に会ったりとしている。
果たして、本当に冤罪だったのか?


約500ページというボリュームのある量でしたが、最後の最後で真実がわかるので、最後まで飽きさせませんでした。

冤罪をテーマにした作品というと、逮捕された人物が本当に無実かのような雰囲気を漂わせます。ですが、この作品は「本当に冤罪?」といった疑惑の雰囲気があったので、何が本当で、何が嘘なのか、最後までずっと疑心暗鬼で読んでいました。

二部構成になっていて、第一部は当時の事件の模様と現在での人々の動きが描かれています。

強引な捜査、何が何でもホシをあげる警察にいかにも冤罪を生み出すかのような行動で、警察の闇を感じました。

一つの事件をきっかけに渦巻く人間の憎悪や疑惑が、細かく書かれていて、「事件」の恐ろしさを感じました。多少説明口調でしたが、楽しめました。

そして、新たに起きる殺人事件。

第二部では、ある裁判の模様から始まります。いつの間にか、ある人物が逮捕されて、過去の事件と絡みながら、淡々と進んでいきます。読み手としては、犯人は誰なのか?とジワジワと真相がわかっていき、あっと驚く犯人にたどり着くことを期待していました。

しかし、ここでは事後報告かのようにわかっていくので、ちょっと興醒めしてしまいました。

それでも、登場人物と一緒に傍聴席にいるような感覚でしたので、その世界観には引き込まれました。

ただ、これで事件は終わりかと思いきや、まだまだ続きがあり、全てが分かった時には衝撃的でした。

あまりにも事件の関係者たちが可哀想で、何ともやりきれない気持ちになりました。

冤罪を生み出さないためにも、しっかりとした捜査が重要であることを感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年6月
感想投稿日 : 2021年6月29日
読了日 : 2021年6月27日
本棚登録日 : 2021年6月28日

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