2012年に出版された物の新装版。
8年前のものとは思えない、今活かすことのできる示唆に富んだ本だった。偶然にも成人の日に読了となる。
子どものひきこもりを中心テーマに、その支援を長年されてきた精神科医の斎藤環さんとキャリアカウンセラーの小島貴子さんが、朝日カルチャーセンターで対談した物を書籍化している。
非常に考えさせられたのは、子どもとの関係性の前に、夫婦の関係性を見直すことが大事だと再三言われている事だ。
子どもが自立する年齢になっても、"お父さん“"お母さん”の役割から降りれなくなってしまっていることや、母親が夫と二人の生活になることを嫌がっていることを子どもが察して、それゆえ自立しにくくさせている母子密着型の子育てについてなど、とても痛いところを突かれていた。
子どもの同居率が高い国ではひきこもりが多く、同居率が低い国では若者のホームレス率が高くなる、など日本の文化的背景や価値観など多角面から意見を交換されている。
また、子どもと親の時代のスピード感の違いなどからくるズレなど、目からウロコの内容だ。
ひきこもりの当事者だけでなく、子育てをする親、教育に携わる人、社会問題に関心がある人、この国の未来を憂う人全てにおすすめの一冊である。
以下気になったフレーズを簡潔にメモした。
「精神年齢は7掛け」とも言われはじめている。平均寿命80歳の今、成人前の20年間は大人の社会に入るまでの土台としては、あまりにも短い助走ではないか。
日本では高等教育(大学、短大、通信制など)への進学率が81.1%(2011年)。それこそ30歳くらいまでなら、平然と学生生活を続けられる。
今厚生労働省も若者支援において、若者という言葉の定義を「おおむね34歳」までとしていたのが、ここ数年「おおむね39歳」までにしている。
親子間での「以心伝心」は子どもを退行させる。お互いに会話の中で希望や欲求をしっかり表現すること。
"何でもいい"をやめる。問題解決を人任せにせず自分で考えること。
男性の生涯未婚率は1975年の2%から、2011年の20%へと、10倍近く増加している。
要するに、就職にしても結婚にしても、かつては自明であったものがどんどん崩れてきているわけで、いまはちょうど過渡期にある。「考えなくてもよい」文化で育ってきた親が、いちいち「考えなければならない」文化のなかで子育てすることを求められるようになったことで、さまざまな摩擦が起きてきたようだ。
ひきこもりのご家庭は子どもの年齢を考えずに子ども扱いをする反面で、「もう30歳なんだから」「もう40歳なんだから」と、世間的な区切りのことに関しては非常にこだわっている。そういった態度を「日本的ダブルバインド」と呼ぶ。口では厳しいことしか言わない。一方で態度においては全面的に子どもの面倒を見てしまっている。
2020.1.13
- 感想投稿日 : 2020年1月12日
- 読了日 : 2020年1月12日
- 本棚登録日 : 2019年10月5日
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