4/14までの110円ダウンロード・キャンペーンで購入。パソコン用ビューアをダウンロードしたうえで読んでみた。ビューア自体は簡素なつくりで、文字の少ない新書やビジネス書をサクサク読むにはいいが、文学作品をじっくり読むには正直つらいかもしれない。
内容はアメリカの電子書籍状況、日本へ導入する際のハードル、そして作者/読者共同体への影響など、バランスがとれていて実に分かりやすい。目からウロコの新しい情報は特にないものの、ケータイ小説を例にとったコンテクスト消費の説明には丁寧なリサーチが冴えているし、情報は信頼できそう。基礎的情報を押さえておくには十分な一冊といえる。
ところで、この本自体 twitter で情報が流され、講演会が開かれ、安価ダウンロード・キャンペーンが展開され……とコンテクストを意識した戦略をとっているのは明らかで、その辺ディスカバー21(D21)はさすが、と言わなきゃいけない。
でも、わざわざ出版社ウェブサイトからビューアをダウンロードしたうえで書籍を購入、っていうシステムがとにかく面倒のひとことに尽きる。このビューアでほかに読みたい本があるかといえば相変わらず自己啓発本ばかりが並んでいてウンザリさせられるし。110円のお試しだから投げ銭にも悔いはないが、これで1155円だったら正直まじめに後悔しただろう。
総じて、このまどろっこしさ、スッキリしない感じこそ、日本の電子書籍事情(目下)そのものなんだろうなぁという印象。
追記(4/13):
佐々木さんの Twitter をフォローすると、思考停止した旧弊な日本出版界への苛立ちがひしひしと感じられる。ひとりのユーザ/読者として私は佐々木さんの意見に全面的に賛成だし、それゆえ「当たり前だろ」と思ってしまうわけだけど、この意見は笑ってしまうくらい出版流通界には通用しないようだ。その点で、古い体質の業界に内部から揺さぶりをかけた、本書の意義はいや増す。
http://twitter.com/sasakitoshinao
- 感想投稿日 : 2010年4月10日
- 読了日 : 2010年4月10日
- 本棚登録日 : 2010年4月10日
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