これは衝撃的作品だ。
数々の賞を取っているのを知りながらも、山田 詠美という人は、私の中では、文豪の肩書きに収めるには、少し浮いた存在だった。
奇才、とも違う。
じゃあなんなんだと聞かれたら、奔放に自分に正直に生きている女性に、たまたま神様が表現力を授けた結果、こういう小説家が生まれました、としか言いようがない。
主人公は、女子力なんて鼻で笑い飛ばすほどの、徹底的に女たる女であり、
甘える事のプロフェッショナルであり、
同時に欲望と怠惰に忠実で、打算をつきつめすぎて正直で無垢な女である。
つまり、おいしく食べやすいように加工されたワガママな女である。
物語は、彼女が恋人に唾を吐きかける事からはじまる。
男は汚いものとして唾をぬぐった。それをみて彼女は恋の終わりを知る。
彼女は重大な過ちに気がつく。
男を一人だけ選んで愛してしまった事は、間違いだったのだと。
再び自分を甘やかすために、彼女は熱帯のバリへ、リゾートにでる。
彼女は決して美しくはない。
しかし確固たる自信に溢れている。皆が私を好きなのだと言い張る。
皆が娼婦だと指さしても、どうして皆がそれをしないのかと首をかしげる。
四行に一度くらいの割合で「!?」と驚かされる。
台詞に、感性に、展開に、そして文才に。
自身の作品について、山田詠美は幸福の吐瀉物と表している。
そしてその吐瀉物はお金を稼ぎすぎてしまった、と。
山田詠美がまったく謙遜と無縁の人物だと仮定して。
いやいや。作品は出産レベルですよ。
この人にとっての普通が、世間的には希少な感性であり、
それを不快感薄く、ただし深く伝えられる文才を兼ね備えていて、
当人の自覚以上にこの作品には価値があると、私はおもいますよ。
所々、えwそれはさすがに勘違いじゃね?と思ってしまう説得力のなさと、
本人の写真が余計だったので☆をひいて☆4。
この本のしおり紐が、南国を思わせる草のような素材だったのは、
私が手にとった本だけたまたま?
仕様だったら素敵だなー。
- 感想投稿日 : 2012年3月3日
- 読了日 : 2012年3月18日
- 本棚登録日 : 2012年2月14日
みんなの感想をみる