仏壇下の観音扉を開く
とおばあちゃんの匂い
がする─
知ってます。湿布薬の
ような匂いです。
その扉は私の実家にも
在ります。
そして近頃は年老いた
母から同じ匂いがする
ようになりました。
ここになけなしの言葉
を綴ったとて仕方なく、
ただ「愛している」の
ひと言を言ってあげる
だけで、
母はそれを私に見せず
とも心の中では泣いて
喜んでくれるでしょう。
なのに、面と向かって
口からこぼれ出るのは
そっけない言葉ばかり。
いままでとあまりにも
態度が違うので、
恥ずかしくなるんです、
柄じゃないよね、と。
こうしてあげたかった
という後悔をしそうで、
そう、このままでは・・・
だから、勇気を出して
私がその言葉を伝える
ことができる時まで、
どうか、母さん長生き
してねと─
心に灯がともりました。
家族愛を綴った何れも
素敵な六篇でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年3月2日
- 読了日 : 2024年3月2日
- 本棚登録日 : 2024年3月2日
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