わが悲しき娼婦たちの思い出

  • 新潮社 (2006年9月28日発売)
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感想 : 95

処女と交わることを自らのの誕生日のお祝いに思いついた老境の新聞記者。
なじみの娼館で、薬により眠らされた少女を準備してもらいますが、90の齢にして、はじめて彼は恋心を知ります。

寝ている娘に名前を与え、本を読んで聞かせ、あまつさえ生活をともにする空想を見る…。一方、現実の彼女については娼館の主の口から伝え聞くばかりで、老人は一人よがりの愛の妄想を発展させます。

少女を買うのは悪徳だし、老人の恋だって一方通行の孤独な想い。世の中にもどこか不穏な雰囲気が漂います。新聞記事を検閲官に揉み消され、軍部が市民に目を光らせ、主人公はほとんど無一文になってしまう…。

それでも、死を目前に控えた年齢で人生の素晴らしさに目覚めた男の、生きる力漲る作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年12月7日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年12月7日

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