十三角関係―名探偵篇 (光文社文庫 や 23-2)

著者 :
  • 光文社 (2001年3月1日発売)
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本棚登録 : 137
感想 : 20
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長くなりそうなので、レビューは『帰去来殺人事件』『十三角関係』のみです。
「帰去来殺人事件」
山田風太郎といえば、僕のなかで変格的なミステリを書く作家というイメージがあったのですが、今作は真っ直ぐド直球の本格ミステリの傑作短編でした。(結末に限っては普通の探偵小説とは一線を異にしていますが…。)まず足跡の問題がすごく良くできています。答えはすぐそこにありそうなのに、手が届かないもどかしさ。そして特筆すべきは、あまりに悪魔的なアリバイトリックです。これは○○トリックの派生系でしょうが、この一作をもってして完璧に作り上げられています。どこからこのような発想が思い浮かぶのか、不思議で仕方がありません。そしてラストは名探偵荊木歓喜らしい締めくくりでとても満足しました。
「十三角関係」
帰去来にくらべて落ちる印象はあるものの、長編で荊木ものが読めるのは嬉しい限りです。本作で面白いのは、短期間で被害者の部屋に幾人もの怪しい人物が出入りし、どの段階で殺されたのかがわからない、さらに死体は四肢を切断されていた、という舞台設定でしょう。初期に殺されていれば、そのあとの人たちは死体を見ているわけですが、登場人物たちが人を喰ったような奴ばかりのため安易に容疑者を絞れない。そして訪れる解決編で指摘される犯人は意外すぎるもの。しかしそれを成立させてしまう山田風太郎の並々ならぬ手腕が凄すぎます。
日本屈指の名探偵、荊木歓喜の登場作すべて詰まった本書は、ミステリファン必読でしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年7月29日
読了日 : 2015年7月21日
本棚登録日 : 2015年7月21日

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