夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)

  • 新潮社 (1971年8月3日発売)
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本棚登録 : 1901
感想 : 115

シェイクスピアの作品で最も好きなのが「夏の夜の夢」。
先ず、タイトルが最高に良い。何か幻想的でハッピーで、
胸を締め付けるような爽やかな甘美さを感じさせてくれる。
登場人物たちが妖精なので、多くの台詞が自然に幻想的になっており、
聞いているだけで、心ときめく。詩情豊かな幻想喜劇。
そして、そこから紡がれるふくよかな台詞が全く陳腐にならず、
見る者の心にすーっと優しく染み入ってくる。
読む度に、幸せな気分になる珠玉の作品だと思う。
チェスタトンもこの作品が大好きだったようだ。
花々の甘い風のなかに踊るキャラクターや台詞たちは、
何か抱きしめたくなるような懐かしさも感じさせてくれる。

福田恆存氏の訳は素晴らしく、
「待つ身の楽しさもあと四日、そうすれば新月の宵が来る。
かけてゆく月の歩みの、いかに遅いことか!」と始まると、ドキドキする。
「露をさがしに行かなければ、そうして桜草という桜草の耳たぶに、真珠の玉をかけてやらなければ」
「キューピッドの矢に射抜かれた紫の花の滴」
「おい、音楽だ。〜この大地のゆりかごを、そっとゆすってやるのだ。〜それ、雲雀の声が朝の歌を」
最後はパックが「ちょいと夏の夜のうたたねに垣間見た夢幻に過ぎないと」
「いずれパックが舞台でお礼をいたします」と言って消えていく。

「あらし」も良い。さすがシェイクスピア。
ただ、「夏の夜の夢」が、私にとっては素晴らし過ぎる。
是非ともオススメの宝石。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 50冊プロジェクト
感想投稿日 : 2009年6月4日
読了日 : 2009年6月4日
本棚登録日 : 2009年6月4日

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