「とんこつQ&A」その他三編の、短編集。
「嘘の道」「良夫婦」について
実際にありそうな事を淡々と綴られていて怖い。
このどちらも…なぜだか、もはや、どこにも可笑みは感じられない感じの内容……。
人間の心の弱さや、闇のような部分を感じる作品。
「冷たい大根の煮物」について
周りから忠告を受けていたことを気にしていたわたしが、結果的にどうなったか…という。
これは実際にもありそうな感じもして、可笑しかった。
「とんこつ Q &A」これが一番良かった。
あらすじ。
社会不適合タイプの主人公今川さん。ふ
とんこつラーメンのない、とんこつという名の中華店のバイトをする。彼女は「いらっしゃいませ」すら、自分から言えない程の人だった。でも自分でマニュアルを(Q &A)作り、それを読むことなら出来ることに気がつき仕事をする。それは初めはメモに始まりやがてノートにして使っていく。そんな今川さんを店の大将や、その息子(坊っちゃん)は、温かく見守る。なぜか自分の言葉で話せないようなわたしをむしろ歓迎している位なのだ。
そんな中、また一人、新たなバイトの女性を雇う。
三十代半ばの女性。今川さん以上に「主体性」を持たないわたしに似たような、自分から何も言葉を言えないような人。また、この人も店の大将や坊っちゃんは、歓迎しているよう。一人増えたことで、皆の関係性は、どうなっていくのか…?という事を読み進めるお話。
私は、以前読んだ「むらさきのスカートの女」や、「あひる」に通じるような部分を感じた。
人が人を無意識のようにコントロールしていく怖さ。それから「身代わり」という関係性、その感覚の怖さが感じた部分。そして、ちょっと普通でない人たちの不気味感…
この作品は仕事上からそれ以上の関係までエスカレートしていく突き抜けた展開の内容を描いていた。
一気読みできる読みやすさはあるが、引っ掛かりざらつく気分が終始否めない。そして、淡々とした描写のなかに少しの可笑しみもちょこちょこと覗かせる。
全体的には、ほのぼのしている描写だからこそかえって怖さを増す世界。
そう、それから この「Q&A 」のところ。
最後に改めてよくよくよ―く見てみて気がついたw
そうだ、これ、これも今村夏子さんワールド…
- 感想投稿日 : 2022年12月10日
- 読了日 : 2022年12月10日
- 本棚登録日 : 2022年12月10日
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