連続殺人、密室、恋愛、猫!
有名シリーズの記念すべき第一作だが、意気込みが先行してさまざまな要素を盛り込み過ぎてやや消化不良の感がある。
メインの事件が、シンプルな謎解きに終わらず二重のトリックが介在する点は評価できるが、その他の雑多な要素はご都合的主義に絡み合って、もはやミステリではなくファンタジーの域である。(もちろん猫が推理力を働かせるのは許容できるファンタジーであり、問題なのはその点ではない)
特に主人公の妹に関する謎の顛末、そして連続殺人の犯人に至っては、早々に予想はつくもののいざ種明かしされてみたら「なんじゃそりゃ」と鼻白むこと請け合いである。正直言ってまったく必要のない要素と言わざるを得ない。
もちろん40年前の小説であり、若い小説家がサービス精神を盛り込もうと意気込んで書いた作品に現代の視点でものを言うのはフェアではない面があるのは重々承知だが、いつまで経っても色褪せない名作は存在し、この作品が令和の世に読まれてこうしてレビューされているのは厳然たる事実なのでその点についてはご容赦願いたい。
やや批判的になったが、むろん良いところもたくさんある。繰り返すが何せ有名シリーズの記念すべき第一作なのだ。それ一度お読みになってその目で確かめていただきたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年8月20日
- 読了日 : 2023年8月20日
- 本棚登録日 : 2023年8月20日
みんなの感想をみる