いしいしんじ作品についてのおぼえがき
”みずうみ”をよんだあとは、水音が印象に残った。
水くみたちのみずうみから、タクシー運転手、分娩台まで全章にわたる水の気配。羊水ってどんな匂いなんだろ?としりたくなる。
ものごとはおこるだけ。みずのなかを漂っていくような。
”死産”というほんとのできごとをゆったりふくんで流れている物語がよかった。
実体験が入った小説はすきじゃないというひともいるけど、ただ受け入れるにはできすぎてて切なすぎる世界観だからこそ、人間臭さがあって安心できた。
いしいしんじ作品をよむと「湿度」や「気温」や「匂い」を感じる。
とくにみずの匂い。そしていつも羊水ってどんな匂いなのかなって知りたくなる。
ぬくい水の底から、水面にはいってくる日のひかりを眺めてるような。
大きな「ながれ」があって「ものごと」はおこるもの、という世界観が安心するような、でもこわいような。良いことも悪いこともなくて、ただ「ながれ」の中にいるだけ。
だからなにかうまくいかないとき、そんな雰囲気が親しくて、でも漂うにはこわくて、ちょっと反抗してみたくなる人間臭さが恋しくて、いしいしんじの本をよむ気がする。
麦ふみクーツェ、プラネタリウムのふたご、ポーの話、それから、みずうみ、ある一日、四とそれ以上の国と順々にもういちどたどりよみしたくなった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年8月29日
- 読了日 : 2012年8月25日
- 本棚登録日 : 2012年8月28日
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