国際霊柩送還とは、海外で亡くなった日本人の遺体や遺骨を日本に搬送し、日本で亡くなった外国人の遺体や遺骨を祖国へ届けることだ。本書はノンフィクションで、その国際霊柩送還の仕事を、それを専門とするエアハース・インターナショナル社という会社の業務や、そこで働く人たちの仕事ぶりを追うことにより示している。同社の社長が亡くなった人が翼に乗って旅をするのが「天使のフライト」のようだと、国際霊柩送還のことを「エンジェルフライト」と呼んでいることが題名の由来だ。
海外で亡くなった日本人の遺体や遺骨を日本に搬送することが、エアハース社の仕事と上記したが、本書で紹介されている彼らの主要な仕事は、羽田あるいは成田空港に到着した法人の遺体を、個人の実家に届けることである。その際に、遺体に修復を施すことが最も大事な役割のように感じた。
外国で亡くなられた方は事故で亡くなられる場合も多いし、また、死に不審な点があれば司法解剖され、大なり小なり遺体が傷つくことも多い。遺体を修復することを、エンバーミングというらしいが、欧米以外の新興国ではエンバーミングの技術が未熟で、日本に到着した遺体の状態がそういった観点からも悪いことが多い。それを、死の前の日常の故人の状態に戻したうえで、遺族のもとに戻すことが何よりも大事であると、エアハース社の方たちは考えており、修復・エンバーミングに最大の努力を払う。それが大事なことであることは、本書を読めば分かる。
表に出ることはないが、亡くなった方のご遺族にとってはとても大事な役割を果たしている彼らの活動に焦点を当てたノンフィクション。題材としては、気分が高揚するようなものではないが、とても興味深く読んだ。
- 感想投稿日 : 2022年1月9日
- 読了日 : 2022年1月9日
- 本棚登録日 : 2022年1月8日
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