東京23区×格差と階級 (中公新書ラクレ 741)

著者 :
  • 中央公論新社 (2021年9月8日発売)
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「格差と階級」というどちらかと言えば、センセーショナルな題名とはうらはらに、実態データを丹念に分析した、どちらかと言えば、学問的な雰囲気を持った本だ。実際に社会学の研究をベースとして本書は書かれている。
例えば「中央区銀座一丁目」というような単位を、「町丁目」と呼ぶらしいが、その町丁目ごとに色々な統計データを取得し、地図上に、それを色の違いや、白黒のページは印刷の濃さにより一覧性をもったものとして示した地図が多く掲載されている。取得され、本書の中で紹介されているデータとしては、例えば、「世帯年収」「管理職・専門職比率」「大学・大学院卒業者比率」「1世帯あたり人員」「未婚率」「65歳以上比率」など、非常に多様なものがある。
それらを見て思うことは、東京は東京というひとつの地名ではくくれないほど多様である、ということだ。例えば世帯年収は都心部から西側が高く、東側が低い、といった東京23区全体から言える多様性もあるが、同じ区内でも、例えば同じ港区内でも町丁目によって、世帯年収は大きく異なる。同じ区内にも多様性が内包されているわけで、実際にそれらを統計が示された地図でみると、「モザイク模様」という言葉がぴったりと当てはまる気がする。例えば所得の格差は東京23区に特有の問題ではない。日本中、あるいは、世界中で起こっている問題であるが、東京という世界的な大都会には色々な意味で世界最先端の場所がある一方で、取り残された場所もある。従って、格差が分かりやすい形で先鋭的に出てくるのだな、と感じた。

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感想投稿日 : 2021年12月13日
読了日 : 2021年12月13日
本棚登録日 : 2021年12月10日

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