筆者は、ふとした偶然から、大学時代の恩師である、モリー先生を毎週火曜日に訪ねて、人生の色々な話をする、あるいは、恩師の考えを聴くことになる。
対話は14回目の火曜日で終わる。モリー先生がそこで亡くなったのだ。モリー先生は、ALSを患っていたのである。
ALSは、ホーキング博士が患っていた病気。身体中の筋肉が脚の方から動かなくなり、最後は呼吸が出来なくなり、死に至る。現代の医学では治療の方法はないし、患者は自分が遠くない将来に死ぬこと、どのような死に方をするのかを知ってしまうという、残酷な病気だ。
そのような状態の中で、人生にとって本当に大事なものは何かについて、モリー先生は語る。それは、人生の絶対的な真実ということではないのだけれども、モリー先生の人生にとっての真実であり、心に響く。
それは、下記のような考えだ。
■多くの人が無意味な人生を抱えて歩き回っている。自分では大事なことのように思ってあれこれ忙しく立ち働いているけれども、実は半分ねているようなものだ。まちがったものを追いかけているからそうなる。人生に意味を与える道は、人を愛すること、自分の周囲の社会に尽くすこと、自分に目的と意味を与えてくれるものを創りだすこと
■人生でいちばん大事なことは、愛をどうやって表に出すか、どうやって受け入れるか、その方法を学ぶことだよ
■いずれ死ぬことを認めて、いつ死んでもいいように準備すること。そのほうがずっといい。そうしてこそ、生きている間、はるかに真剣に人生に取り組むことができる
■みなまちがったものに価値をおいている。それが人生へのはなはだしい幻滅につながる
■ほんとうに満足を与えてくれるものは何だと思う?自分が人にあげられるものを提供すること。時間、あるいは心づかい。話をすること
■人を愛することにみずからを捧げよ、周囲の社会にみずからを捧げよ、目的と意味を与えてくれるものを創りだすことにみずからを捧げよ
■人に与えることで自分が元気になれるんだよ。自分の時間を与え、悲しい思いをしていた人たちをほほえませることができれば、私としてはこれ以上ないほど健康になった感じがするんだよ。
こうしてあげたいと、心の底から出てくることをやるんだな。そうすれば、不満をおぼえることはない。うらやむこともない、人のものをほしがることもない。それどころか、そうすることによって、山のように多くのものが自分に返ってくる
- 感想投稿日 : 2020年7月20日
- 読了日 : 2020年7月21日
- 本棚登録日 : 2020年7月20日
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