トロツキーが1936年に出版したスターリン体制の批判書である。工業生産の成長については、質までふくめた指標を提示し、経済発展の指導については、戦時共産主義・市場を復活した新経済政策(ネップ)、五カ年計画の歴史を概説しています。社会主義は労働生産性の高い豊かな社会の上に建設されるのであって、その点で大多数がまずしいスターリン体制は社会主義ではないとしています。ソヴィエト・テルミドール(反革命)を指摘した部分では、ボリシェビキ党の変質や、格差の増大を論じ、ソ連が官僚独裁制であることを宣伝しています。トロツキーの分析は家庭(とくに妊娠中絶権をソ連が禁止したこと)や青年の教育、民族政策、赤軍の理論にも及び、官僚独裁制によって、十月革命が退歩させられていることが暴き出されます。最後は、プロレタリアートの世界革命にもとづいた、官僚専制やボナパルティズムに対する革命の必要性をよびかけています。社会主義の傷ましい失敗を知る上で、重要な著作だと思われます。とくに官僚の害悪を指摘した部分は、レーニンによる「国家の死滅」の問題もふくめ、プラトンの『国家』や中国古代思想の統治論の問題へ引き戻されます。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
社会学
- 感想投稿日 : 2008年2月24日
- 読了日 : 2008年2月24日
- 本棚登録日 : 2008年2月24日
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