吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫) (創元推理文庫 502-1)

  • 東京創元社 (1971年4月18日発売)
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Lideoで読んだ。1897年刊行。物語は手記・日記・蝋管録音・新聞記事などの組み合わせで進む。主な登場人物は7人、ドラキュラ伯爵、弁理士ジョナサン・ハーカー、ジョナサンの妻ミナ・ハーカー、アーサー(ゴダルミング卿)、アメリカ人キンシー、精神科医のセワード、アムステルダム大学の医学・哲学・法学教授ヴァン・ヘルシングである。第一部にあたる物語は、ジョナサンがロンドンの不動産取引でトランシルヴァニアのドラキュラ伯爵をたずね、その居城で怪奇にであうというもの。第二部はミナの友人、ルーシーが夢遊病から吸血鬼になっていく話、この過程で彼女の三人の求婚者、アーサー・セワード・キンシーが集まり、セワードが恩師ヘルシングを呼び寄せ、吸血鬼の謎が解き明かされていく。第三部はルーシーの本当の意味での死の後、ジョナサン・ミナとヘルシングらが合流し、まずロンドンのドラキュラの居場所をつぶしていき、故郷に帰らざるを得なくさせ、ドラキュラ城までの追跡と吸血鬼の打倒である。訳文は非常に読みやすく、構成も短い手記が多いのでページがすすむ。ドラキュラにはいろいろな制約があり、昼間は人間の姿をとらざるを得ないが、夜になると霧・狼・蝙蝠などに変化することができ、吸血鬼や狼などを操り、催眠術も使える。力は二十人力である。鏡には映らず、ニンニク・十字架・聖餅などの品によわく、水を渡ることはできない。また、建物には誰かが「入れ」と言わないと入れない。昼間に首を切られたり、心臓に杭を打ち込まれると四散して死ぬ。吸血鬼になった者もドラキュラが死ぬと呪縛が解かれることになっている。セワードの患者にレンフィールドという食肉性患者がいるが、ハエやクモなどをむさぼり食う。「霊魂なんかいらない、ただ生命が欲しいだけだ」とか、「血は生命である」といった独特の考えをもっていて、ドラキュラがミナを襲うきっかけを作ってしまう。ミナは鉄道マニアで速記、タイプライターができ、吸血鬼にされながらもドラキュラ追跡に同行し、明晰な頭脳でドラキュラの通るルートを推理したりする。作者ブラム・ストーカーの名前はエブラハムでブラムは略称、スコットランド生まれで、オスカーワイルドの先輩、芝居好きで演劇記者や劇団の経営に携わった。ヴァン・ヘルシングのモデルは中央アジアの研究者でブダペスト大学の東洋語の教授アミニウス・ヴァンペリとのこと。作中でもヴァン・ヘルシングの同僚でブダペスト大学教授アルミニウスとして言及されている。全般的に19世紀の科学主義とアッティカの末裔を自称するドラキュラの中世伝説との葛藤の話であるが、輸血で血液型を顧慮していない点や、シャルコーなどフロイト以前の精神医学についても言及があり、十九世紀の科学の雰囲気を知ることができる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2013年3月19日
読了日 : 2013年3月19日
本棚登録日 : 2013年3月19日

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