不在の騎士 (白水Uブックス)

  • 白水社 (2017年3月16日発売)
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本棚登録 : 180
感想 : 10

からっぽのヨロイである「不在の騎士」アジルールフォ、理想と現実のはざまで元気よく生きて恋するランバルド、自分と他人の区別がつかず、メチャクチャに生きているグルドゥルー、生身の男に幻滅した女騎士ブラダマンテ、こんな人々が織りなす中世騎士物語風の話です。語り手は修道院の罰でお話を書かされている修道女テオドーラなのだが、なんとも頼りにならない語り手で、めんどくさくなって話を端折ったりする。アジルールフォは几帳面で現実的、騎士道小説のなかにいながら、騎士の「物語」を「記録」によって「事実」に格下げしてしまうので、ほかの騎士からはうとまれている。そんなかれに騎士の資格が否定されるという事件が起こるという部分が話の筋です。物語の人物がどのように自ら存在するようになるのか、「存在することを学ぶ」というなんとも形而上的な小説、というか寓話であると思う。アジルールフォが存在がつねに物を数えることによって、自らの存在しない存在を確認するところは、SNSでつねに反応を数えている現代人にも通ずるところがあるのではないかと思う。最後はなんとも面白いシカケである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2017年7月19日
読了日 : 2017年7月19日
本棚登録日 : 2017年7月19日

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