例によって、虚実織り交ぜたサスペンス小説。この作品は、サスペンス小説と言うよりも冒険小説である。それも、ジャングルの奥にある伝説の都市を探すというのだから、うんと古典的な、ハガードばりの冒険小説である。
もっとも、この作者のことだからきちんと現代小説に仕上げていて、そういう冒険小説に、現代テクノロジーを絡め、企業小説的な要素を絡め、「手話の出来るゴリラ」という癖玉を持ってくる。これがくせ者で、実にお見事である。
古典的といってもいいくらいのオーソドックスな物語に、現代テクノロジーの味付け、次々と主人公を襲いかかるさまざま困難と、それをかいくぐって先へ進んでいくテンポは実におもしろく、久しぶりに夢中になって読みふけったクライトンであった。「ジュラシック・パーク」のように、振り上げた拳の落としどころに困ってしまうようなこともなく、山場から結末まで、うまくまとめていて読みがいがあった。
流れがちょっと主人公たちにとって都合が良すぎるし、なんとも安易に「消耗要員」を登場させてしまうあたりが気になるんだけど、そのあたりに目をつぶれば、まずは文庫本一冊分、お腹いっぱいに満足させてくれる作品であった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外の小説
- 感想投稿日 : 2011年3月22日
- 読了日 : 2011年3月22日
- 本棚登録日 : 2011年3月22日
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