ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤 (ハヤカワepi文庫 マ 1-5)

  • 早川書房 (2018年8月21日発売)
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本棚登録 : 191
感想 : 11
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この著者の作品を読んだのは『ザ・ロード』以来の2作目でしたが、これは読み手を選ぶ作品ですね。自分の場合、初読時はまったく乗れませんでした。インディアンの狩りが延々続くストーリーは単調だし、映像化不可能かつPTA有害図書指定確実な極悪非道で残虐なシーンのオンパレードに辟易。極めつけは時折出てくる句点で区切らない異常に長い文章で、読みにくいったらありゃしない・・・といった印象だったのですが、頑張って読み返してみるとこれはこれでなかなか味があるようにも思えてきました。
本作のキモはホールデン判事が語る言葉の数々であることは疑いようがありません。自分が一番シビれたのは「人間が登場する前から戦争は人間を待っていた。最高の職業が最高のやり手を待っていたんだ」でしたが、これを始めとした生と死、善と悪、神と人間といった哲学的な内容にリアリティを持たせるための舞台装置として、先述した残虐なシーンとか、シンプルなストーリー展開とか、読者に緊張感を与える長い文章とかを揃えているんだな、と解釈しました。そう考えると著者の伝えたいことは伝わってきたし、これも一つのオリジナリティだとすれば、好きなタイプの小説ではないけれどまあ悪くもないかな、と思えてきました。
正直誰にでもお勧めできる作品とは言い難いのですが、現代小説に物足りなさを感じている人、硬派で歯ごたえがあるスルメのような作品を欲する人であれば、かなり楽しめるのではないかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外
感想投稿日 : 2018年11月24日
読了日 : 2018年11月23日
本棚登録日 : 2018年11月24日

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