センスオブワンダーをもじった著書。「ワンダー」=「感じる」ことと、「何だあ」と疑問をもつことを大切にしようというメッセージを、目の見えない著者ならでは具体例を通して描いていく。
裸足で足の裏の感覚を楽しんだり、音で「地図」を描いたり、匂いで季節が進んでいくかんじを掴んだりと、視覚以外の感覚をフルに働かせて豊かな世界を楽しんでいる著者の姿が印象的だった。
何も見えない「シーンレス」な世界に比べて、感覚を働かせて周囲を豊かに感じることができる世界を「シーンフル」な世界と著者は呼んでいる。この「シーンフル」な世界を生きることの幸せを細やかに描いている。
この本を読むと、目の見える自分がいかに「シーンレス」な世界に生きていたのかということを感じさせられる。仕事の生産性を上げることとか、自分の能力を高めることとかばかり考えていたなあと、反省した。仕事のことや、自分の向上心を休ませて、自然と溶け込む時をもちたいなあと思った。
紡に味合わせてあげたい世界も「シーンフル」な世界で、世界を「シーンフル」に捉えていくことのできる感性を育ててあげたいと思った。
この本は小学校高学年くらいから読めるし、子どもたちにも読んでほしい。けれども、各章の最後の文章が子をもつ親に向けて書いてあるために、子ども自身が読むと「自分に向けて書かれていない」と感じてしまうかもしれない。そこが惜しい点。読者を意識して書くことはよいけれど、それを明示してしまうと、その読者層以外は排除されたような感覚になってしまうんだなということに気づいた。
- 感想投稿日 : 2023年11月22日
- 読了日 : 2023年8月15日
- 本棚登録日 : 2023年8月15日
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