14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社 (2015年6月17日発売)
3.19
  • (2)
  • (13)
  • (20)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 190
感想 : 17

これまで誰にも話したことのない70年前の記憶をたどる。自分自身を「少女」と客観視して語っていくが、時間も時制も行ったり来たりで、独特の言い回し・言葉遣いなどもあり、読み進めるのに正直なところかなり骨が折れた。でも、ずっと封印してきたことを思い出してとつとつと語る姿としては嘘がないというか、こういうふうに語るのがせいいっぱいであるのだろうと察する。
14歳という多感な時期を戦時下に過ごしたそのときには当人には気づきようもなかったことだが、敵のことも戦争の現実も広い世界のこともなにも知らされない無知や、貧窮して先の見えない暮らしの中での世の中から人生のすべてへの無関心、情報から遮断された闇の中で見通しのない棄民難民暮らしが、どんなに酷なことであったか、傷として残るものであったか、と想像させてくれる。
だれのせい、なにのせい、といった因果関係には言及しない。後付の解釈をくわえずに、頼るべき記録資料もほとんどないまま「記憶」とその後の人生にあらわれた痕跡を書き記し、14歳だった自分にとっての「戦争」をパッケージとしてさしだした。そこに著者のノンフィクション作家としての誠実な姿勢を感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2015年9月2日
読了日 : 2015年9月2日
本棚登録日 : 2015年9月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする