新版 いっぱしの女 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2021年7月12日発売)
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本棚登録 : 1058
感想 : 67

中学生の頃にまわりで大ブームだったけれど、ちょっと遅れて高校生になってからあれこれコバルト文庫で読んでいた(そのせいか、「クララ白書」や「なんて素敵にジャパネスク」シリーズのような代表作は実は読んでない。最初は「シンデレラ迷宮」だったかな?)。そのあと、愛あふれる翻訳少女小説ブックガイド「マイ・ディア」と復刊された角川マイ・ディア文庫にどっぷりはまったのは大学生のときか。

そんな少女小説のパイオニア氷室冴子さんのエッセイ。
中高生のわたしたちを夢中にさせていた80年代後半から90年代はじめ、ちょうど30代にさしかかった頃の氷室さんの考えていたこと感じていたことは、30年経った今読んでも古びないどころか、あ、わかるな、と思うことばかりで(かんたんに「わかる」ですませてはいけない、と氷室さんには叱られてしまうが)、今の自分はそのころの氷室さんよりずっと年上になってしまって読んでいるのが不思議な気がする。
引用したくなるような文章ばかりだったが、なかでも「とてもすばらしかった旅行について」が印象深く、「やっぱり評論もよみたい」には打ちのめされた。

わたしより15歳年上で、親や世間からの結婚への圧もいまに比べたらずっとずっと強かった30代独身の彼女が、あるいはいま以上にマチズモに支配されて「女」が不自由だった中で彼女が感じていた理不尽や無力感、辟易、憤懣、自戒、そしていまの言葉で言えばシスターフッドが痛いぐらい感じられて、そうしたものが当時読んでいた作品からもにじみ出ていて、自分をとりこにしていたのかもしれない…もう一度あれこれ読み直してみたくなった。

1957年生まれ、もしご存命でこの世界を見ていたらどう感じただろう…と考えずにはいられず、ちょっと調べたところ、ちょうど同じ年頃といえば、高橋留美子、柴門ふみ、そして斎藤美奈子がいるとわかった。斎藤美奈子といえば、氷室冴子も愛してやまなかった翻訳少女小説をあらためて読み解く「挑発する少女小説」をちょうどだしたところなのが奇遇。斎藤美奈子にこの本の感想を聞いてみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫
感想投稿日 : 2021年7月17日
読了日 : 2021年7月25日
本棚登録日 : 2021年7月15日

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