始皇帝を主人公にした、500ページにわたる長編小説。
小説というから、フィクションも多数含まれていると思うが、始皇帝を暴君のイメージ通りに描いている。
キングダムの嬴政とはほど遠い。
でも、多分こちらの嬴政の方が実像に近いのだろうと思う。
むしろ、人の痛みを分からないサイコパスの様な人格でないと、中華では人の上に立ち続けることはできない。
この本では、嬴政が極悪人に描かれ、嬴政以外の人物、成蟜、母、呂不韋などは、むしろ嬴政に翻弄されている。
裏切り、謀反、焚書に、虐殺と、本書での始皇帝は凄まじい。
そして、中華統一後の嬴政は、国造りよりも、不老不死の薬を求めることに躍起になり、それがむしろ自身の寿命を縮めてしまった。
史上初中華統一を成し遂げたことは偉業だが、それ以降の経緯を見ると、それほど優れた人物ではなかったのかもしれないと思わせる。
特に死後、遺言を改ざんされ、長男を自殺に追い込まれ、信頼していた宦官趙高に好き放題されるというのは、始皇帝が自分の死後を全く考えていなかった証拠。不老不死を求めていたから死ぬつもりはなかったのかもしれないが。
始皇帝嬴政の光の部分だけでなく、闇の部分もきちんと見つめないといけないと気付かされた一冊。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年9月16日
- 読了日 : 2022年9月16日
- 本棚登録日 : 2022年9月15日
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