うさぎドロップ [DVD]

監督 : SABU 
出演 : 松山ケンイチ  香里奈  芦田愛菜 
  • Happinet(SB)(D)
3.23
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本棚登録 : 871
感想 : 188
4

結構前に原作漫画を一度だけ読んだ。細かいところはほとんど忘れたが、主人公の男性が引き取り手のない親戚の女児を引き取って生活する話という概要だけは憶えていたので、BSで観た。

わりと全般を通して明るく、ほのぼの系の映画。

モデル役の香里奈は、松山ケンイチと画的に不似合いすぎ&映画の登場人物の中で一人だけ明らかに雰囲気と職業が浮いていて(現実離れしていて)ミスキャスト。ミスキャストっていうか、この映画にそもそもモデル役が登場する必要が全くない。なんでモデルにしちゃったの?恋愛要素を絡むのなら、もっと現実的な職業の女性にすればいいのに、そんな職業は溢れるほどあるのに、なぜモデル??それか、モデルとの話を加えるなら、せめて「もう少し」清楚でナチュラルで穏やかで家庭的な雰囲気の女優が良かった。つまり、そもそも香里奈のシーン全般がいらない。香里奈とのストーリーがなければもっといい映画だったと思うのに。香里奈の部分せいで、この映画の雰囲気をぶち壊し、安っぽくなり、内容の密度が薄くなり、非現実的な大衆映画に成り下がり、良さが半分は失われた気がする。残念。

松山ケンイチは演技がうまい。とにかくうまいと改めて思った。演技に、嫌味と不自然さがまるでないのがいい。
芦田マナはバラエティ番組での先入観があるためあまり好きではないが、雰囲気と服装が可愛かったので意外と嫌悪感がわかなかった。原作のりんは大人びていて傷ついていたせいで捻くれ者で憎たらしくて可愛くない嫌いなタイプの子供だった気がするけど、映画はそうでもなく普通の子供だった。

あと、こういう映画って、しばしば子供を取り巻く主人公以外の大人たち(親戚の人たちや高畑敦子演じる施設の女性とか)みんな薄情者のように描かれるし、これも例に漏れずそうで、観客に「(大吉以外の)世間の大人たちは冷たい。ひどい」って思わせるように誘導しているかのようだけど、実際は大吉以外の大人だってみんなそれなりに、りんのことをちゃんと考えているのに。そもそも、人には人の事情がそれぞれあるし、その人にはその人の変えられない生活があって、変えられない(りんを引き取れないから押し付けあう)のは別に悪いことではないのに、どうして(作者や制作者である現実の)大人って、こういうときに主人公以外の周りの大人たちを悪者のように描きたがるんだろうと疑問に思う。それに、(軽々しくでも・一時の感情からであっても)引き取った大吉=善人のようになっているけど、現実ではそういう選択をする方が必ずしも善ではないと思う。引き取れないから「誰かに引き取ってもらえれば…」って考える人が、一見すると無責任で冷たいように見えるのかもしれないけど、現実ではかえってそういう人のほうが大人としては正常で常識的な価値観を持っていると思う。別に彼女に嫌がらせをしているわけでも、しようと思っているわけでもなんでもないんだから。大人は、自分の身近にいる小さい子供の幸せを、程度の差こそあれ、みんなそれなりに考えているものだと思うけど。

大吉とりんのやり取りとその雰囲気は、たまに3104と自分のことを思い出させた。りんは、わたし。あの感じは、父と娘でもなく、兄と妹でもない。心理的距離は近いけど、良い意味でどこまでも他人なのだ。りんみたいに…つまり、感情のままに、無邪気で素直で可愛い態度や行動が許されるのっていいなって思った。だから、いつまでも子供でいたいと、また強く思った。不可能だけれど。社会は許してくれないけど、見た目も実年齢も大人なのに精神は子供っぽい行動や言動をする私を温かい目で見てくれる・許容してくれる・愛してくれる・そしてそれに付き合ってくれるような男性と、年をとった時にいつまでも一緒にいたいと思った。


「こうしてみると、お父さん・お母さんばかりじゃないか」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画
感想投稿日 : 2013年6月4日
読了日 : 2013年6月4日
本棚登録日 : 2013年6月4日

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