ネイティブ・アメリカンとネイティブ・ジャパニーズ

著者 :
  • 太田出版 (2007年8月30日発売)
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感想 : 9
5

これはかなり目から鱗、な本でした。
日本人はモンゴロイドであり、アメリカの先住民族と遠い兄弟のようなものである、というのです。

「結局「日本」はその力で千数百年近く国をドライブしてきた。そして問題は、わたしたちの国とされる「日本の歴史」が、たかだか千三百年ぐらいしかないといころにある。この事実に気がついたとき、わたしは腰が抜けるくらい驚いた。」(p.177)

なんと!
わたしも日本は長い歴史があると思っていたよ。

「だってそれまでは「日本」の歴史は十分ふるいと思っていたからなのだ。学校でも「日本には長い歴史がある」と教える。だがそれは「文字に記された歴史がそれぐらいはある」というだけのことで、それ以前の歴史をすべてないものにしてしまうよくできたトリックみたいなものではないのか。」

なるほど。
文字に記された歴史以前の歴史! それについて思いを馳せたことすらなかった!

「ところがアメリカの先住民族の歴史を勉強してまず最初に気がつくことは、彼らの歴史が軽々と数千年前にさかのぼれるという事実である。よくいわれる「ベーリング海峡を渡ってきた説」ですら否定して「自分たちは地球が生まれたときからここにいるのだ」と主張する人たちすらいるのだ。
ヨーロッパ大陸からのコロンブスの到来などつい昨日の話であり、「日本」の考古学の用語を用いるならば、その時までアメリカ大陸では縄文時代が連綿と続いていたことになる。わたしたちと彼らの間には、最低でも二千年近い歴史認識のヒラキがあるのである。
同じモンゴロイドの兄弟姉妹でありながら、われわれには「地球とつながって生きていた時代」の記憶がまるでない。その部分がきれいに消されてしまっている。
「日本人」になることによって、奇妙に聞こえるかもしれないけれど「革新的な農耕民族に変身すること」によって、かえって地球と切り離されてしまったために、「日本人」には日本列島を愛し尊敬するという考え方が以後ずっとできず、大地は「金を生む場所」となり、強欲にドライブされるまま、その結果おそらくは世界で一番環境が汚染された島になってしまっている。
「日本人」が「日本には二千年の歴史がある」というとき、それは、「日本人になること」によって地球と切り離されて二千年が経ったということを意味する。「日本」と「日本人」を考えるためには、消された「日本以前の数千年数万年の歴史」を、想像力の翼を可能な限り広げて検証してみる必要があるのではないか。日本列島で日本人はいかに形作られたのか? わたしがアメリカの砂漠で見せられた多くのヴィジョンは、ことごとくそのことを指し示すものであった。
日本列島のインディアンたちははたしてどこに、いかにして、消えてしまったのだろうか?」(pp.177-179)

p95の「セブンスジェネレーション」もぜひ今こそ日本人が心しなくてはいけないことじゃないかしら。
「子供たちとともに、未だ生まれていない7世代先のことに、われわれは常に思いを馳せなくてはなりません」--ジャニーズ・サンダウン・ハテット、セネカ一族の長老の言葉

「はっきりしておかなくてはならないことは、七世代先のことを考えるためには、「今日よりも明日がもっと素晴らしくなってほしい」とする自己中心的な右肩上がり思考では、当然ながらうまくいかないということ。いくわけもない。右肩上がりの思考とそれにともなった生き方をする人たちは、未来にたいする自分の責任なんてものを考えることもなく、長く時代を一直線にドライブしてきたわけで、つきつめると半ば強引に、時代を自分たちに好ましい方向に変えることに生きる目的が集約されてしまうから。
ところがネイティブの人たちの数千年単位の円環を描く時間の基本的な認識では「今日と同じぐらい素晴らしい日がこれからも続けばよい」と考える。時代の流れと時代の流れはひとつだったし、人間の生き方にブレはほとんどなかった。歴史が始まる以前の世界が数万年から数千年続いているのもそのためである。」

これ図書館で借りた本だけど、買いたいな。手元にほしい。

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感想投稿日 : 2012年2月26日
本棚登録日 : 2012年2月26日

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