50歳からの性教育 (河出新書)

  • 河出書房新社 (2023年4月25日発売)
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本棚登録 : 158
感想 : 10
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独身未婚中年男性の自分にとって、第5章までは特に目新しい情報はありませんでしたが、非常に良い本だと思いました。

自分にとっては、第6章の村瀬先生と田嶋先生の対談がすごく良かった。お二人の対談だけで1冊読みたいと思いました。
田嶋先生はTVだと男性を言い負かすほどの勢いでいろいろと物議をかもしていましたが(自分はTVタックルが好きでよく見ていました)、対談で語られている内容は非常に地に足のついた話だと思いました。

もっとも、自分は平成期日本のフェミニズムは労働政策的にはあまり上手く行かなかったと思っています。男女雇用機会均等法が出来た当時は経済的にはまだ上向きでしたが、バブルがはじけました。本来、労働上男女平等というのであれば、低い女性の待遇を、高い男性に合わせて引き上げる必要があったわけですが、コスト削減で人件費に目を付け、低い女性の待遇に男性の待遇を合わせて、見かけ上の「男女平等」にしてしまったことが、平成期日本の大きな失敗であったように思います。

この本の中での田嶋先生の「親だから、子だからといってその関係に手抜きは禁物」という言葉に、ハッとさせられました。結局、戦後昭和の家庭は、団塊の世代の性役割分業が経済上は上手くいったものの、それに目がくらんで夫婦仲を軽視して、その結果子育てが上手くいかず、コミュニケーション能力があまり上手でない団塊ジュニアを育ててしまった、という側面があったように思います(自分は団塊ジュニアで、親はよく自分を育ててくれたと感謝していますが、自分自身はコミュニケーション能力を上達させることはできませんでした)。

あとがきで村瀬先生が提唱される「弱いほうに合わせる」という考え方は、おそらく人間が他の生物と決定的に違う特徴だと思うのですが、残念ながら日本含め、今の世界はそのようにはできていなさそうです。自分も含め、もう少し他者に関心が持てるほどの(物心共に)余裕が欲しいなと思った次第です。

それにしても、この本を読んでいて、自分の世代の性交渉って「男性器中心主義」だったのかと、オラオラ系な性交渉をしたことのない自分はその点はまったく共感できませんでした(笑)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月19日
読了日 : 2023年8月19日
本棚登録日 : 2023年8月19日

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