安倍政権による集団的自衛権の行使のための憲法解釈の変更や安全保障法案群の問題点を抜本的なところから批判する書。過去の政府のスタンスや各種資料などを丁寧に積み上げて、明確に論理的に語っている。
集団的自衛権行使が従来の政府見解などから照らして、現行憲法上不可能であるという立場の主張を理解するために役立つ一冊。
反対ありきという執筆動機ゆえなのか、北朝鮮ミサイルの標的としての原発の話や元寇以来他国から侵略を受けていないなどと一部感情的な強引なくだりはあるが、単なる勇み足で全体の論理を乱すようなものではない。
安全保障の概念についても、環境問題や感染症の問題などやや蛇足的な問題を持ち出し、焦点がブレ気味ではあるが、主張の本体については何らの傷はついていないと思われる。軍事オタクという表現を度々用いて、戦略的優先度が低いと筆者が見做す軍事的対応を批判しているが、そこは解釈が分かれる領域であり、本書の目的からすれば、無駄に隙を作ってしまっている印象を受けた。
あくまでも、冷静に客観的に論理的に組み立てられた部分にフォーカスして読む限り、最新の動向から歴史的資料までバランス良く語られ、基本的な知識が得られる良書。双方の意見を比較して読みたいタイプの読者なら安心して読める反対派の書かと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
政治経済
- 感想投稿日 : 2015年6月28日
- 読了日 : 2015年6月28日
- 本棚登録日 : 2015年6月28日
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