私は臓器を提供しない (新書y 1)

著者 :
  • 洋泉社 (2000年3月1日発売)
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感想 : 17
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下記のバックグラウンドの人々から、「臓器を提供しない」理由が述べられている。
本書でも「個人が了解していて、適切に医師が対応していたら、移植はあってもいいのでは」という意見もあったが、もっと大きく生命とは?を考えると、自分の命を個人のもの(家族の生命を自分たちのもの)と考えて移植を承諾すること自体はどうなのかとも考えさせられる。
自分も含め、家族にはカードを持たないでと言った。が、自分や家族が移植するしかない場合、臓器がいただける時に、断ってまで短い余命のほうをあえて選択するのだろうか。
今後、副作用の程度や移植手術の複雑さがより下がっていくと思うが、自分はどう考えていくか。
読んでいて、本当に考えさせられたが、正直気持ち悪くもなった。

■医師、近藤誠
・ドナーとレシピエントは絶対的にドナーが足りないという需要を満たせない図がある。医療機関はそのギャップを埋めたい、となる。アメリカでは遺族に「脳死」と言わず「死んだ」と言う医療機関がある。レシピエントは自分より優先度が高い人々を恨みながら、ひたすら自分の順番が来るまで待ち続けることになる。これは本当の医療ではない。レシピエントの優先順位も人が決めることになるので、恣意的な部分が入る。
・ドナーカードを持っていた為に助かる可能性があったにもかかわらず、脳死を待つ方向に切り替えられた。杜撰な救命措置になっていた。
脳死か心臓死か医師の対応にゆだれられており、それはメディアさえも知らないところでのみ行われている。
■小児科医、阿部知子
・脳死を確かめるために何度も検査をする。脳死を判定されても内蔵にメスが入った時に血圧が急に変動し、麻酔が必要だった。
・黄色の臓器提供カードも簡素すぎる。本人が本当に書いたものかもわからない。
・小川市立病院の青年はカードを持っていて、一番見えやすいところにカードがおかれていた。運ばれてから11時間以上脳外科医の診察がないままに脳死へ悪化していった。
・千里救命センターではカードを持っていたか詳細は不明で様々な臓器摘出後に移植には不適切とされた。脳死判定の際にミスもあった。
・脳死といっても幅があり、生き返る例も実際にあった。
・臓器摘出の際に涙が出る事はよく知られている

■脳外科医、近藤考
・脳死判定された人の臓器を探して見つからない時もある。肝臓移植先が見つからなかった時、膵臓を移植することになったが、この時この患者は本当に膵臓の移植が必要だったのだろうか。肝臓移植先が見つかっていたら、膵臓の移植はされてなかっただろう。
膵臓移植された患者は一年後に移植部の出血で死亡した。
・脳死と判定されたあとでも、摘出される時は激しい痛みを伴う、事実麻酔科医がついた。
・「脳死に近い」として蘇生措置をしない扱いをされ、家族に臓器提供を求め、承諾すると、脳波が平坦でないために昇圧剤を止めて移植の準備がなされた例がある。翌年十分に蘇生措置が行われなかったと家族が提訴した。
・実際に「脳死」でなくても脳死から移植を先取りする形で治療を打ち切るようなことが現場では行われていた。
・全脳死は判定できない、検査をしようがない。
■評論家、吉本隆明
・自分の肉親が余命半年で、移植をすれば生き延びれるということであれば、したほうがいいと思うかもしれない。
なので簡単に賛成・反対と言えない。
■評論家、小浜逸郎
・本当に脳死だったかどうかの論議はおいて置いて、脳死は脳死であって死ではない。呼吸器で生かされているにせよ、暖かい体は家族にとって死体と思うことは不自然である。
・移植をすれば永らえる人と提供したい人がいて技術があれば、臓器移植はあって良いと思う。「如何にしても生き延びようとする人間のエゴ」というふうに問題を一般化する人は明日をもしれない患者と向き合っていない。
・「自分の場合には脳死をもって死としてよいと個人が思うことと、それを法として定めることとは全く別次元の問題である」(『「脳死」と臓器移植』)
・オーストラリアでは運転免許に臓器提供の諾否を記入しなければならず、スウェーデンではノン・ドナーカードを持っていなければありとあらゆる身体部分を提供させられる。
・子供のための提供ならしたい。
■評論家、宮崎哲弥
・アメリカでは移植を待つのは白人よりマイノリティエスニシティが、男性より女性が長いという結果がでている
・あるアメリカの麻酔科医が、手術の時に麻酔をかけるのと、脳死提供前に麻酔をかけるのではいちじるしく違って気持ちが悪いと説明した。
・アメリカでは生前に本人の体にとっては悪影響でも臓器を新鮮に保つ薬が投与されている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年2月11日
読了日 : 2012年2月11日
本棚登録日 : 2011年5月21日

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